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霞草
第6章 二人の想い
夕方に向けてバスの本数が少なくなるということから、泉を後にした僕達は、真っ直ぐ帰ることにした。
バスの中で、一日を振り返りながら、色々話をした。
彼女はにこやかな笑みで、
「あなたと一緒なら、街にいくのも楽しいわ。」
と言った。
僕は彼女に惹かれている、いや、彼女が好きだ。愛しい想いを自覚した。
そして彼女も少なからず、僕に好意を持ってくれているだろう。でも、言葉にすることは出来ない。
先にあるのは別離の時、想いを伝えてもそれ以上僕は何も出来ないのだから。
溢れる想いを抑えて、僕は、
「また一緒に街に行こう。」
果たせる約束だけを口にした。
彼女も、
「指切りげんまんしたものね。必ずね。」
とだけ答えた。
きっと、同じ想いでいるはずだがそれ以上は言葉にしなかった。