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霞草
第7章 すれ違い

「次は牧場ね。」

僕は自転車に跨がり、彼女に後ろに乗るように勧めた。

牧場まではしばらくある。
爽やかな風を感じながら自転車を漕ぐ。
霞の存在を背中に感じて嬉しくなる。
一緒にいるだけで溢れる喜びを噛みしめながら、坂道を登っていった。

「霞は乗馬したことある?」

「子供のころに、でも覚えてない。」

「僕はない、乗ってみたいけどいいかな。」

霞は、見せ物のように繋がれた動物たちを、可哀想に思っているので、遠慮がちに訊いた。

「いいわよ。」

最終日の午後のためか、さほど待たずに乗馬することができた。

もちろん引き馬で大したスピードではないものの、
目線の高さや、馬の背中から伝わるポックリポックリという独特の歩調を感じる。

並んで進む霞に、

「どう?楽しい?」

「高くてちょっと怖い、でも気持ちいいね。ポックリポックリ、背中温かいね。」

霞も、馬の歩調を同じように感じているのが嬉しく、

「馬って本当にポックリポックリ歩くんだね。」

と言うと、

「唄のようにね。」

と笑顔の霞を見た。

好きな人と一緒に喜びを分かち合いながら生きる、僕は初めての感情に更に幸せを感じた。


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