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霞草
第7章 すれ違い
「味比べ…」
彼女の言葉を遮り、ソフトクリームを持つ手ごと引き寄せ、バニラを食べる。
「うん、こっちの方がやっぱり美味しい。」
「あっ、私まだ食べてないのに…」
「霞だってさっきそうだったよ。」
僕の仕返しに微笑みながら霞はバニラを味わって、
「待ったからかもしれないけど、こっちが美味しいね。」
と答えた。
「チョコも美味しいよ。」
僕のも薦めると彼女が近づいてきて食べる。
ドキドキしながらも楽しい。
結局、味は混ざり、何が一番だったかなんて決められなくなってしまった。
僕達は、恋人の街の賑わいにほだされ溶け込んで、ひとときの恋人を楽しんだ。
他にも見て回るところを数ヶ所ピックアップしていたが、意外に時間がなく、あと寄っても一ヶ所がせいぜいだと思った。
僕はその中から『明日の見える丘』に行きたいと思い霞に訊いてみる。
霞も行ったことがなく、よく知らない場所だったので、そこに寄って帰ることにした。
街興しの為のネーミングかもしれないが、
その丘から明日が見えるなら、
僕の明日を教えて欲しい。
情けない考えかもしれないが、先の見えない自分に不安だった。