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霞草
第7章 すれ違い
僕は、訊いてしまったことを後悔したが、
「このことは、僕の中にとどめておきます。」
と約束した。
霞は、街を出て東京にくることはないだろう。
病気のこともあるし、おじさんがそれを許すこともないのだろう。
霞にも内緒にしていることを、僕に話してくれたのは、僕が訊いたからだけでなく、僕の想いを知って、叶わぬ恋だと諭すためでもあったのだろう。
野菜を摘む手を止めず、動揺を隠して、
「家族のために全てを捨てるおじさんは、やはり強くて逞しいです。尊敬します。」
と、声が震えないようにゆっくり話すのが精一杯だった。
僕は家族のように温かく迎えてくれたおじさんに、将来、自分の生き方が決まったら、お父さんと呼べる時が来るのではないかと、わずかな希望を持っていた。
だが、霞と一緒に過ごすには、僕がここに住まなければならない。
今の僕には、それは決められない。
不安定な僕の状態は、ますます、不確かなものとなった。