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霞草
第8章 別離
野原を抜けて森に入る。
ここも、残雪のある寒々した場所だったが、明るい光が射し込み木々から小鳥のさえずりが聞こえる。
霞と手を繋ぎ歩く。
森の先に展望台に続く道が照らされる。
展望台も一面の花、絨毯のようだ。
「素敵な季節になったね。」
僕はそれしか言えない。
花の絨毯に光がさし、そこから向こう側の山、田畑、街が見える。
田畑も青々している。
絵画、天国、美しさは言葉に出来ない。
息を呑んで座り込む、少し早めに昼にする。
景色とおばさんの料理の両方を堪能する。
霞はあまり話さない。これが最後と勘づいているのだろうか。
街を見下ろし、牧場や駅、学校などを探す。
「ここから、明日は見えないのかしら…」
霞の一言に何も言えない。
一面の花を摘む。
「今日のおばさんへのお土産。」
「山草は切り花に向かないの、綺麗なのは一日かな…」
寂しそうな霞。
「でも、何もお土産がないから、おばさん達、宿が忙しくてあまり出かけてないから…」
「しゅうは優しいね。」
僕は全種類の花を摘む。
「水汲んでくるね。」
弁当の空き箱を持って霞は森にいく。
僕は花束になるほど摘んだ。