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第9章 交流

「最初はさ、単に仕事に追われてナーバスになっているだけかと思っていたんだ。あと生理前のイライラとか。……これは男の人には分かりにくいか。えーと、ありもしない想像を巡らせて、一喜一憂したりして。どんどん悪い方にばかり物事を捉えるようになってさ。それが何ヶ月も続くから、かなりしんどくてね」

俺は彼女の状態を想像しながら尋ねた。

「考えたくないことを考えてしまうということ？」

「そうだね。簡単に言うと、そういうことだね」

不思議だ。

俺には経験がないことなのに、何となく分かる。
俺が人の経験について話を聞いて、想像がつくということは滅多にないことだった。

「そう、自分の意思とは反して、次々と色んなことを思い出して、考えてしまうんだよね。仕事の注文の内容、段取りなんかは良いとしても、依頼主の担当者の感じ悪い態度とか、上司の妙な口癖とか、全くどうでいい事まで頭に浮かんでくるんだ。それが半年も続いたから病院へ行ったんだ」

「宮森総合病院へ？」