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銀木犀の香る寝屋であなたと
第2章 家族
珠子と一樹が席に着き、二人を見守っていると、いつの間にか隅のオルガンにやはり年老いた修道女が座っていて、美しい音楽が優しく鳴り響く。
神父は浩一と葉子の間に立ち何やら言い始め、二人は「誓います」と言いあったのち、口づけをした。
珠子はそんな二人を眩しく見つめる。(どんな時でも一緒なのね)
聖句の難しい言い回しを全て理解はできなかったが、とても美しく感じる。
式はあっという間に終わったが感慨深く心に残るものだった。
帰り際、神父が「ヨカッタラ、またおいでください」と挨拶した。
「ぜひ」
浩一と葉子は信者でもないのに、こうして受け入れてくれる懐の深さに感じ入る。
珠子と一樹には、そもそも信仰心も宗教に対する感覚も、一般の人と何ら変わらず薄いものだったが、神父の物腰や慈悲深さを子供心に感じていた。
「教会っていいところね。お父さま」
「うん。イエス様はね。人は皆、平等で、皆、神の子だと教えられたそうだよ」
「ビョウドウ……」
珠子も一樹もピンとこない。
「いつか本当にそんな時代が来ると思うよ」
そういう浩一の隣で優しく微笑む葉子を見ながら、珠子は教会にあったマリア像に似ていると思っていた。
そしてこの婚礼の水面下で親族の思惑が画策されていることを、もちろん珠子は何も知らない。
神父は浩一と葉子の間に立ち何やら言い始め、二人は「誓います」と言いあったのち、口づけをした。
珠子はそんな二人を眩しく見つめる。(どんな時でも一緒なのね)
聖句の難しい言い回しを全て理解はできなかったが、とても美しく感じる。
式はあっという間に終わったが感慨深く心に残るものだった。
帰り際、神父が「ヨカッタラ、またおいでください」と挨拶した。
「ぜひ」
浩一と葉子は信者でもないのに、こうして受け入れてくれる懐の深さに感じ入る。
珠子と一樹には、そもそも信仰心も宗教に対する感覚も、一般の人と何ら変わらず薄いものだったが、神父の物腰や慈悲深さを子供心に感じていた。
「教会っていいところね。お父さま」
「うん。イエス様はね。人は皆、平等で、皆、神の子だと教えられたそうだよ」
「ビョウドウ……」
珠子も一樹もピンとこない。
「いつか本当にそんな時代が来ると思うよ」
そういう浩一の隣で優しく微笑む葉子を見ながら、珠子は教会にあったマリア像に似ていると思っていた。
そしてこの婚礼の水面下で親族の思惑が画策されていることを、もちろん珠子は何も知らない。