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銀木犀の香る寝屋であなたと
第2章 家族
「疲れたかい?」

 入浴を終えて浩一と葉子は寝所で人心地ついた。

「いえ」

 葉子は疲労よりも満ち足りた喜びでいっぱいだ。

「あの、ありがとうございます。こんなにうれしいことがあるなんて思いもしなかった……」
「もっと。喜ばせたい」

 浩一はそっと葉子の肩を抱き寄せる。

「だんな様」

 口づけを、教会とは違う、熱烈な口づけを交わし、葉子を横たわらせた。ふわっと真綿が葉子の身体を包み込む。

「柔らかい……」
「ずっと柔らかい寝床で抱いてやりたかったんだよ」

「どんなところでもいいんです。だんな様と愛し合えるなら……」

 温かいうれし涙が葉子の頬を伝い、それを浩一が優しくぬぐう。

「見せておくれ、余すところなく」
「はい……」

 葉子はそっと襦袢を開き白い身体を電灯の下にさらす。裏山の住まいは電気が通っておらず、蝋燭と月光が頼りだった。

「綺麗だ……」
 
 あかぎれていた指先も治り、滑らかな肌が輝く。普段から身体をよく使い働いている葉子は子を一人産んで、三十路を過ぎたが瑞々しく若い流線形を保っていた。
浩一は葉子の足の爪先から甲を撫で、脛から膝頭まで何度も擦った。普段あまり見ることが出来ない足を浩一は堪能する。

「今夜はゆっくり抱きたい」

「うれしい……」
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