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銀木犀の香る寝屋であなたと
第1章 月夜の出会い
――浩一と母の葉子の情交に気づいたのは三か月前だった。小さな小屋ではあるが二つの部屋があり襖で仕切られている。
なんとなく寝苦しさを感じた一樹は、目を覚まして漏れる襖の光に気づいた。ぼんやりとした寝ぼけ眼で、さっと襖を開けると対面座位で抱き合っている浩一と葉子を目の当たりにした。
「あ、はっ。か、一樹」
慌てて葉子は、脱いでいた着物を身体に押さえつけるようにして肌を隠す。
浩一は慌てることなく、さっと葉子に羽織をかけ、「一樹くん、起こしたかい?」と優しく尋ねた。
「えっと。だんなさま……?」
にっこり微笑み、浩一は頷く。
「僕はね、君のおかあさんをあいしてるんだ。許してくれるかい?」
葉子を見ると頬を染め、初めて見る恥じらった表情で下を向いている。
許すも何も、葉子は浩一の屋敷で飯炊きの使用人として働いており、何年も前に亡くなった一樹の父も同じく屋敷の使用人だった。
つまり主人を許さないなど使用人が発想するわけもなかった。
問いかけにぼんやりと「はい」と答える。
「毎週金曜日の晩にお母さんに会いに来るから、少しの間だけ我慢しておくれ」
浩一は一樹に頭を下げた。
「だ、だんな様、頭を下げるなんて!」
葉子は慌てて浩一の身体を起こさせる。一樹はぼんやりとした頭の片隅で、自分を尊重してくれたことを感じ、自分の父親とはなんて違うのだろうと思った。
すでに亡くなった父親は、物心ついたころから葉子や一樹に怒鳴り散らし、酒の匂いを振りまき他所で喧嘩をしていた。
紳士的な浩一の態度に、一樹は今度はしっかりと「はい」と答えて「失礼します」と寝床へと戻った。
それからなるべく金曜日の夜は早く寝ようとするのだが、やはり衣擦れの音や吐息などで目が覚めてしまい、隣にいるのもいたたまれず、終わるまでこうして外でぶらついているのだった。
なんとなく寝苦しさを感じた一樹は、目を覚まして漏れる襖の光に気づいた。ぼんやりとした寝ぼけ眼で、さっと襖を開けると対面座位で抱き合っている浩一と葉子を目の当たりにした。
「あ、はっ。か、一樹」
慌てて葉子は、脱いでいた着物を身体に押さえつけるようにして肌を隠す。
浩一は慌てることなく、さっと葉子に羽織をかけ、「一樹くん、起こしたかい?」と優しく尋ねた。
「えっと。だんなさま……?」
にっこり微笑み、浩一は頷く。
「僕はね、君のおかあさんをあいしてるんだ。許してくれるかい?」
葉子を見ると頬を染め、初めて見る恥じらった表情で下を向いている。
許すも何も、葉子は浩一の屋敷で飯炊きの使用人として働いており、何年も前に亡くなった一樹の父も同じく屋敷の使用人だった。
つまり主人を許さないなど使用人が発想するわけもなかった。
問いかけにぼんやりと「はい」と答える。
「毎週金曜日の晩にお母さんに会いに来るから、少しの間だけ我慢しておくれ」
浩一は一樹に頭を下げた。
「だ、だんな様、頭を下げるなんて!」
葉子は慌てて浩一の身体を起こさせる。一樹はぼんやりとした頭の片隅で、自分を尊重してくれたことを感じ、自分の父親とはなんて違うのだろうと思った。
すでに亡くなった父親は、物心ついたころから葉子や一樹に怒鳴り散らし、酒の匂いを振りまき他所で喧嘩をしていた。
紳士的な浩一の態度に、一樹は今度はしっかりと「はい」と答えて「失礼します」と寝床へと戻った。
それからなるべく金曜日の夜は早く寝ようとするのだが、やはり衣擦れの音や吐息などで目が覚めてしまい、隣にいるのもいたたまれず、終わるまでこうして外でぶらついているのだった。