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銀木犀の香る寝屋であなたと
第1章 月夜の出会い
 言い難そうにしている一樹を見ながら珠子は「わかったわ。一樹さんは仲間外れのようになったと思って寂しいのでしょう?」と明るく言った。

「えっ」

 思いもかけないことを言われたが、そういわれるとそんな気もしてくる。

「珠子もね。おとうさまとばあやがお話しなさってて、大人の話だからあちらに行きなさいと言われると寂しくなるのよ」

 憂う表情を見せながら、それでも珠子は明るく続ける。

「ねえ。またおとうさまがこちらへお邪魔なさるとき、珠子もこっそりくるわ。そして二人でお話ししましょうよ、ね。きっと楽しいわ」
「だ、だめだよ。こんな夜に。危ないからだめだ」

「大丈夫よ。こんなに近いもの。おとうさまの後をつけてくるから危なくなったら、お声を掛けるわ」
「そ、そんな」

 子供心にも、浩一はこの状況を珠子には知られたくないだろうと一樹は考えた。珠子はいい考えだと思っているようで、何を言ってもここに来ることをやめようとはしない。
浩一に話し、諫めさせることは、本末転倒でより話がこじれそうだ。

「わかった。俺が迎えに行く。俺が行くまで扉から出ちゃだめだ。もしも変なやつとかいたり、野犬だって出るかもしれない」
「そうねえ。わかったわ。待ってます」

「ん、じゃ、えーっと、扉を三回叩いたら出てきて」

 にっこり珠子は微笑んで頷いた。気が付くと月が大きく傾いてる。

「あ、そろそろだんな様のお帰りだ。早く、こっち」

 一樹は珠子の手をひき、坂を転がる様に駆け下りる。

「ああっ、待って」
「だんな様が先に帰ったら入れなくなってしまう」

 息を荒げて走り降り扉の前についた。
山の方を見上げると小屋から光が漏れ、ちょうど浩一が引き戸を開けて出るところだった。二人は名残惜しいのかじっと動かずに月を眺めている。

「さ、早く入って。俺も急いで戻らなきゃ」
「ええ、お気をつけてね。ごきげんよう」

 珠子がそう言うとやっと一樹は笑顔で手を振り走り去った。(ふう。どきどきしたわ)

 初めての大冒険に珠子は興奮して部屋に戻った。冷たくなった寝具に熱い身体を横たわらせ心臓の高鳴りを聞いた。
 しばらくすると、またハタ、ハタと足音が聞こえる。(おとうさま、お帰りになったのね)
ふわっとあくびをして珠子は深い闇に落ちていった。
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