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銀木犀の香る寝屋であなたと
第7章 別離
「ほんとうに珠子さんはこれでいいんですか?」
「ええ」
珠子は寂しいがキヨと吉弘がまともな生活を送れることに安堵する。車を見送っていた吉弘が戻ってきた。
「吉弘さん、お母さまを大事になさるのよ」
「かあさま。僕は勉強して立派になります。そしてかあさまみたいに辛い思いをする人がいない社会にしたいと思います」
「吉弘……」
「僕は離れていてもかあさまを忘れない……。ナカも忘れてないよ。ずっと心に住んでいて僕が失敗すると『大丈夫ですよ』って言ってくれて、迷っていると『こっちですよ』って教えてくれるの……。
これからは……かあさまも心に住むよ。僕が間違いそうになったら……叱ってください」
「吉弘さん……」
「うううぅう。珠子さ、ん……。うぅう」
キヨは泣き崩れ畳に突っ伏した。珠子も目の前が滲んで何も見えなかった。
吉弘は初めて子供らしく声をあげて泣き出した。まだ子供なのだ。
彼なりに激動の時代を生き、気を張り詰めていたが子供なのだ。
三人で抱きしめ合い、気が済むまで泣いた。誰か何か言っても言葉にはならなかった。
しかし感謝と愛に満ちた言葉を一生懸命発していることは皆わかっていた。
「ええ」
珠子は寂しいがキヨと吉弘がまともな生活を送れることに安堵する。車を見送っていた吉弘が戻ってきた。
「吉弘さん、お母さまを大事になさるのよ」
「かあさま。僕は勉強して立派になります。そしてかあさまみたいに辛い思いをする人がいない社会にしたいと思います」
「吉弘……」
「僕は離れていてもかあさまを忘れない……。ナカも忘れてないよ。ずっと心に住んでいて僕が失敗すると『大丈夫ですよ』って言ってくれて、迷っていると『こっちですよ』って教えてくれるの……。
これからは……かあさまも心に住むよ。僕が間違いそうになったら……叱ってください」
「吉弘さん……」
「うううぅう。珠子さ、ん……。うぅう」
キヨは泣き崩れ畳に突っ伏した。珠子も目の前が滲んで何も見えなかった。
吉弘は初めて子供らしく声をあげて泣き出した。まだ子供なのだ。
彼なりに激動の時代を生き、気を張り詰めていたが子供なのだ。
三人で抱きしめ合い、気が済むまで泣いた。誰か何か言っても言葉にはならなかった。
しかし感謝と愛に満ちた言葉を一生懸命発していることは皆わかっていた。