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銀木犀の香る寝屋であなたと
第7章 別離
別れの日。誰も涙を見せることはなかった。
新しい旅立ちの日だからだ。悲しい別れではない。
吉弘は「頑張ってきます」とあいさつをした。
キヨは「あなたの幸せをいつも祈っています」と言い、珠子は「ありがとうございました」と礼をのべた。
生活に必要なものは藤井道弘のところにすべてあるということで、ほとんど手ぶらでキヨと吉弘は車に乗り込んだ。
車はすぐに発進し、煙を噴き上げ田舎道をあっという間に去っていく。珠子は見えなくなるまで手を振って見送った。(さようなら。私の家族)
これでよかったのだと自分を納得させる。実の母子が別れるものではない。
珠子とキヨが入れ替わっていることを気づくものはいないであろう。何か聞かれたら、火災の時の怪我でよく覚えていないと言うようにキヨに伝えている。
吉弘も彼女を守り抜くだろう。いびつな母子関係であった高子と文弘を偲ぶ。
二人は身分制度の犠牲者だ。息子である吉弘が曲がらず新しい社会制度へ目を向けてくれることを心から祈った。
新しい旅立ちの日だからだ。悲しい別れではない。
吉弘は「頑張ってきます」とあいさつをした。
キヨは「あなたの幸せをいつも祈っています」と言い、珠子は「ありがとうございました」と礼をのべた。
生活に必要なものは藤井道弘のところにすべてあるということで、ほとんど手ぶらでキヨと吉弘は車に乗り込んだ。
車はすぐに発進し、煙を噴き上げ田舎道をあっという間に去っていく。珠子は見えなくなるまで手を振って見送った。(さようなら。私の家族)
これでよかったのだと自分を納得させる。実の母子が別れるものではない。
珠子とキヨが入れ替わっていることを気づくものはいないであろう。何か聞かれたら、火災の時の怪我でよく覚えていないと言うようにキヨに伝えている。
吉弘も彼女を守り抜くだろう。いびつな母子関係であった高子と文弘を偲ぶ。
二人は身分制度の犠牲者だ。息子である吉弘が曲がらず新しい社会制度へ目を向けてくれることを心から祈った。