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銀木犀の香る寝屋であなたと
第7章 別離
 日が暮れ始めると女給もちらほらやって来、客もにぎわい始めた。外が暗くなるにつれ、店の中が煌々と明るくなってくる。

 珍しくロバートが遅い。珠子はぽつんと壁の花になっている。
ロバートの恋人になるまでは一人でいれば誰かしら声を掛けてきていたが、今では彼の手前誰も『桂花』に声を掛けるものはいない。

 ため息をついているとロバートの友人であるサムが話しかけてきた。

「ハイ、ケイカ」
「ハイ、サム」

 気さくなサムが珍しく神妙な顔つきをして珠子の顔をうかがう。なんだか変な感じがして珠子は尋ねる。

「ねえ、ロバートは忙しいのかしら」
「それがね。言いニクイのだが、本国からフィアンセがきてるんだ」

「フィアンセ?」
「ウム」

 珠子は耳を疑った。

「あ、あの、フィアンセって許婚のことよね?」
「んん?結婚する相手だよ」

「そ、そうなの……」
「知らなかったのカイ?ジェニファーのこと」

「え、ええ……」

 めまいを感じ珠子は椅子に腰かけた。

「コークでも飲むとイイ」
「サンキュー」
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