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色絵
第2章 入門
「帯も既婚と未婚で結び方が違うんですよ。
既婚者が未婚の結び方では、誘っているというか、おかしなことなんです。」
ワタシは恥ずかしくて体が熱くなる。せっかく引き締まった気持ちが崩れる。
「簡単な御太鼓結びにしておきますね。」
キュッと引き締め直されるが、恥ずかしさは治まらない。
「出来ましたよ。」
ワタシは顔を上げられずに腰掛けた。
先生が作品に戻る。
油絵と違って、テーブルに紙を置いたまま描くので、手元が良く見えない。
「もっと近くで見てもいいし、好きにしていていいですよ。」
背後にいるワタシの心まで読まれてしまい、また、ドキッとする。
「はい。」
ワタシは先生の右後ろに椅子を近づけた。
「筆は毛筆ですか?」
「そう、書道で使う筆だよ。色は、普通の水彩絵の具や、日本画用のものを使ったり、油絵の具を使うこともある。
美大では洋画を習ったんだけどね。
繊細な色や線に憧れて、今の画風になったんだ。
日本画に近いけど、特にこだわっていない。
我流かな。」
先生は描きながら話すので独り言のよう。
「でも素敵です。
あっ…なんか、ありきたりの言葉しか浮かばず、すみません。」