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色絵
第2章 入門
先生の儚げな印象は、実際に絵に命を削り込んでいるからではなかろうか。
それほどまでに、薔薇は美しいのだ。
最後に、手前にあるワタシが最初に塗るだろうと答えた花びらが色付けされる。
一輪の花が仕上がる。
葉茎と繋がったその花が、紙から浮き出て、手に取れるのではないかと思うほどに美しく、命が溢れていた。
フゥ…
思わずためいきが出てしまう。
「ずいぶん集中してしまいましたが、貴女が描いていたみたいですね。」
先生が筆を洗いながら、微笑む。
「あっ、息が止まりそうで、思わずためいきが…」
ハハッ…先生が声を出して笑っていた。
「貴女となら長くやっていけそうだ。少し休憩しますか?」
「はい。」
先生が珈琲を入れる。
「先程もお話ししたように、絵に決まりはないのです。ですから、こうしなさいというようなレッスンみたいなことはしません。
僕の真似をする必要もありませんよ。
楽しく見て感じたままを描けばいいのです。」
先生が立ち上がり、本棚から色紙を持ってきた。
「これが見たかったのではないですか?
いや、僕が見て欲しいと素直に言うべきですね。」
優しい笑みで、色紙を渡される。