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色絵
第2章 入門
先日まで飾られていた桜の花の絵だった。
枝に使われている絵の具は何だろうか…
「油絵用の絵の具ですよ。」
また、先生がワタシの心を読み取った。
「先生、どうしてワタシが考えていることがわかるんですか?」
「心理学は習っていませんよ、僕は画家ですから…」
クスクスと笑う先生。
益々不思議で何も言えないワタシ…
「観察力ですよ。貴女が分かりやすいのもあるけれど、
貴女の視線を見れば、貴女が何を見ているかわかる。
貴女の表情を見れば、何を考えているか想像できる。」
「そんなに分かりやすいですか…」
「貴女が純真な方ということですよ。
桜の開花前に、幹の中で赤い樹液が流れるのをご存知ですか?」
「はい、聞いたことがあります。」
「そこから描きたくてね。油絵の具の下に、赤い水彩絵の具で色付けしたんです。
表面のゴツゴツした感じは油絵の具の方が上手く表現できるのでね。
枝の先に行き渡るまでに薄まって、桜色の花びらが色付くと思ったら、凄いことじゃないですか?」
先生の真剣な眼差しにワタシが吸い込まれそうだった。