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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第5章 第一話【桜草】 別離という選択
 どこかで鶯の鳴き声が聞こえたような気がして、明姫は緩慢に視線を動かした。いつまで待てども、鳴き声は聞こえない。やはり空耳だったのだろうと思い直し、また視線を足許の桜草に戻す。
 今日もまた、ここで随分と時間を費やしてしまった。これから部屋に戻って、また刺繍の続きをやらなければ。目下のところ、二人の暮らしは祖母の占いで得た礼金だけで賄われている。
 後宮を下がるに際し、明姫はかなりの慰労金を貰った。彼女はそれを当座の生活費に充てようとしたのに、祖母は笑いながら言った。
―それは、そなたがいずれ嫁ぐときの嫁入り支度に使いなさい。
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