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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第7章 第二話 【桔梗の涙】 異変
ちなみに〝内訓〟というのは当時の上流階級の女性たちの間での女としての心得を説いたものだ。婦女子のための教養読本としては最も有名なものである。
「まさか、そのようなことはございません。〝内訓〟によれば、女は嫁ぐ前は父親の、嫁いだ後は良人の、更に老いては息子の影となれと書いてありますが、生涯、誰かの影に徹して生きるなど、生身の人間には至難の業と思われませんか?」
「中殿」
王が愕きに眼を瞠る。普段はしとやかで、〝はい〟と〝いいえ〟しか言わない王妃がここまではっきりと物を言うのは珍しいことだった。この時、これで話が終われば、もしかしたら事態は良い方向へと向かっていったかもしれない。
「まさか、そのようなことはございません。〝内訓〟によれば、女は嫁ぐ前は父親の、嫁いだ後は良人の、更に老いては息子の影となれと書いてありますが、生涯、誰かの影に徹して生きるなど、生身の人間には至難の業と思われませんか?」
「中殿」
王が愕きに眼を瞠る。普段はしとやかで、〝はい〟と〝いいえ〟しか言わない王妃がここまではっきりと物を言うのは珍しいことだった。この時、これで話が終われば、もしかしたら事態は良い方向へと向かっていったかもしれない。