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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
「これが…この湖の古い物語…悲しくも愛を貫いた2人の愛の物語…」

話し終えた俊樹さんが口を噤む。
私も何も言えなかった。
余りにも残酷で、あまりにも悲しい結末に涙が流れていた。
空を見上げても、その涙が止まることはなかった。

「美弥は…幸せだったと思う?…最後に心が通じ…」

俊樹さんが私の肩に顔を埋めて寂しそうに口にする。
美弥が幸せだったか…

「幸せ…だったと思う。彼女の人生全てはそうじゃなかったかもしれないけど…最後に…愛する者と一緒に逝けるのは本望だったと思う。独りで逝くのはつらいから…きっと…」

「それを聞いて…葉月もきっと浮かばれるね…」

「はい…それに…ここの空気が暖かいのはそのせいかもしれない。美弥と葉月の想いが暖かいから、この場所も暖かい」

そう、ずっと思っていた。
最初怖かったこの場所も時間が立つと怖さが消え、次第に暖かさが伝わってくる。
冬だというのにこの場所は他の場所より暖かく感じていた。
ただの気のせいだと思っていたけど、言い伝えを聞いて納得できた私がいた。
彼女らの幸せに包まれていると感じた。

「美弥と葉月の幸に包まれているような…気がする」

俊樹さんの腕に力が籠る。
縋るようにギュッと抱きしめられた。

「どうしたの??」

振り向けない私は、彼の腕を握りポンポンと叩く。
大丈夫だよと言うように。
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