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遠い日の約束。
第5章 忘れていた過去
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「お正月には帰って来なさいよ」
「分かってる…今度からはチョクチョク帰ってくるから」
「身体に気をつけてな」
「うん…お父さんも身体気を付けて…煙草は控えてよね」
「華ちゃん…また近いうちに会おうね」
「うん…また連絡するね。シンガポールにも行くから」
「幸せ見つけて安心させなね」
「ありがとう…」
それぞれと最後の別れの言葉を交わす。
3日間なんてあっと言う間だった。
笑って泣いて喜怒哀楽が激しい三日間だった。
それでも前に進めるきっかけがつかめ、帰ってきてよかったと思った。
「こんにちは」
別れを惜しんでいる私たちの後ろから俊樹さんが声をかける。
この時間だと知らない皆は驚き顔で、でも再会できたことを喜んでいた。
「同じ電車のようですから新幹線乗り場までご一緒しましょう」
これから一緒に旅行にでかけるのに、わざと口にする。
俊樹さんと一緒だからみんなとの別れも寂しくはなかった。
「またね」と手を振り、ドアが閉まった。
ドア越しの薄い隔たりが少し寂しくさせる。
向こうから見えない場所で俊樹さんが私の手をギュッと握って大丈夫だよと無言で教えてくれた。
だから私は、笑って手を降り続けた。