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遠い日の約束。
第10章 記憶の破片
歩道の真ん中で話していると後ろから部長が声をかけてくる。

「どうした?何かあったか?」

部長の顔を見てホッとしている自分がいた。

「一緒に行くぞ」

いつものように私の頭をワシャワシャと撫で、俊樹の背中を軽く叩いて三人並んで歩き出した。
先ほどまで動かなかった足は嘘のように動いて会社に向かった。
だけど、会社に向かう足が重いのは変わりはない。
あれだけ好きだったのにどうしてなのかと考えながらエレベータに乗った。
そしてドアが開いた。
どうしても一歩がでない。
でなければ行けないのに、足は言うことを聞いてくれない。

「草野…大丈夫だ。行くぞ」

「華…一緒に行こう?」

ふたりが私に話しかけてくれた。

「草野。さっさとこいよ。仕事始まるぞ」

営業部のドアを開けて春馬が声をかけてくれる。

―――私は大丈夫…

そう言い聞かせて一歩足を踏み出した。
何が怖いかなんて分からない。
どうして足が重いのかもわからない。
だけど、きっと大丈夫。
私には俊樹も部長も春馬もいる。
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