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遠い日の約束。
第14章 想いの深さ
ゆっくりと、物音も立てずに部屋の中に入っていく。
廊下からは中の音が何も聞こえない。
リビングにいれば、人がいる気配ぐらい分かるがそれもない。
リビングにいないとすれば、ベッドルーム以外ない。
心臓が痛いほど早打ち始める。
無意識に胸のシャツをクシャリと握り息を止める。
それを察した部長の手が、私の頭をクシャクシャと撫で、力強く頷いた。

『大丈夫だ』

そう言われた気がした。

―――まだ大丈夫。

部長に言われると、本当にそう思えてくる。
私の思い違いでなければ、昔から偉大で尊敬に値する人だった。
辛いとき苦しいとき、いつも手を差し伸べ、正しい道へと導いてくれた人。
それに何度救われただろう。
部長はリビングを指差して軽く頷いた。
私も頷き先にすすむ。
磨りガラスから覗くと中は薄暗い。
カーテンは閉まったままで、隙間から射し込む光は誰もいないことを教えてくれた。
ゆっくりと扉を開いて中を確認して静かに息を吐く。
残るはベッドルーム。
もちろん物音はしない。
なぜなら完全防音で音が外に漏れることはない。
逆を言えば、こちらの音は中には聞こえない。
ベッドルームの扉まで行き、ドアノブを握る。
一度、天を仰ぎ大きく深呼吸をする。
この先に華がいてくれることを祈って、ゆっくりとドアノブを下げて、ドアを開けた。
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