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遠い日の約束。
第14章 想いの深さ
「よかった…無事でいてくれてよかった…」

自然と出てくる安堵の言葉。
私の存在を感じてもらうために、ギュッと抱きしめる。

「…俊樹…私…は誰?」

華の言葉にハッとする。
顔を見れば、心もとない、不安げな表情をしていた。

──私は誰…

華はどこまで思い出した?
自分の過去を…前世をどこまで?
言いようのない不安が襲ってくる。
今回のことで思い出したのかもしれない。
だけど、今の出来事と、昔の出来事が合わさったとき、華の心はどうなる…

「…俊樹…私は…誰なの?」

「華…華…?」

抱きしめていた腕がずっしりと重くなる。
華が意識を飛ばし始めていることが腕から伝わった。
ただ、意識を無くすだけならいい。
もし、あの時の記憶に引きずりこまれたら?
その瞬間、ある風景が頭の中に浮かびあがる。
燃えるほど赤い夕日を浴びながら美弥が葉月にかけた言葉…

『あなたは誰…』

あれは美弥じゃない。
あれは…

「…美弥…お願いだから…華を連れていかないで…」

咄嗟に美弥の名前を呼ぶ。
華を引きずり込まないで。
華にあの忌まわしい過去を思い出させないで
華を…

「返して…」

しかし、私の想いなど届かない。
華はそのまま瞳を閉じて意識を飛ばした。

「華!!華!!目を開けて!華!!」

華を抱きしめて何度も名前呼ぶ。
それでも華が目を覚ますことはなかった。
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