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遠い日の約束。
第15章 残された者の哀しみ
どのくらい、華を抱きしめてそうしていたのか。
気がつけば、救急隊員と警察が部屋の中にいて、私から華を引き離そうとする。

「いや…だ…。もう、離れるのはいや…だ…」

頭を振りながら華を力強く抱きしめた。
そこにいる全ての人が呆れて見ているのも感じる。
けど、もう離れるのは嫌だ。
この手から離すことなんてできない。

「いやだ…もう…」

「立花…」

何度も私の名前を部長が呼ぶ。
顔を上げてみると、やさしい笑顔の部長が私を見ていた。
そして、その横には三宅さんと翔さんが居て、私を囲み、部長は華ごと私を抱きしめる。

「大丈夫だ…誰もお前から草野を奪わない…けどな。今は草野のために病院に連れて行ってやろう…分かるだろう?このままここにいるわけにはいかないんだ」

ゆっくりと諭すように話して、私を納得させようとする。

「でもっ…」

「でもじゃないだろう?草野の身体を一番に考えたらそうすることが一番だって分かるだろう?それに…目を覚まして、この部屋を見たらどうする?一瞬にして全てを思い出すぞ?まだ草野を苦しめたいか?」

「あっ…」

部長のその一言で現実を突きつけられる。
悲惨なことがあったこの場所を華に見せるわけには行かない。
思いだして欲しくはない。
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