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遠い日の約束。
第20章 愛の証
何度かけても絹子が電話に出ることはなかった。
焦る気持ちを落ち着けながら、それでもハンドルを握る手にはしっとりと汗をかき始めていた。

――――お願いだから思い出さないでくれ!!

そう願うことしかできなかった。
いまだに過去に囚われている絹子。
どんなに愛しても、子供が生まれようとも絹子が過去から解き放たれることはない。
些細なことで、その時の事を思い出し、その苦しむ姿をいつまで見続ければ良いのか。
だけど、今回は前面的に私のミス…高科さんの電話で絹子が傍にいることも忘れて囚われていること、このままでは何をされるか分からないことを話してしまった。
そして、戸惑う絹子を労わる余裕もなく一言『華ちゃんを救いに行って来るから』とだけ告げて飛び出した。
今思い返せば、過去を思い出すには十分すぎた。
それに気がついたのは、病院のベットに横たわる華ちゃんを見てからだった。
あれだけ絹子が一番大事だったのに、どうしてか華ちゃんの事が気になって仕方がなかった。
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