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遠い日の約束。
第22章 自責の念
「命を…絶ったか…」

宝賀は天を仰ぎ、今しがた聞いた話に困惑と自責の念に駆られる。
流そうにも流す涙を持ち合わせてはいない。
それに、涙を流す資格さえないと宝賀は知っていた。

宝賀が美弥と顔を合わせたのは数週間前。
母親の法要を行うために、寺に足を向けた時に宝賀は美弥を見つけた。
生きていくために心を殺したと聞いていた宝賀は、朗らかに笑う美弥を見て戸惑いながらも、好きな男と共に生きる道を選んだ美弥の未来が明るければいいと願うだけだった。
願っていたのに、その願いも虚しく簡単に崩れ去るとは思いもしなかった。

「そうらしいんです…あの時、一緒にいらした男性…旦那様と湖で命を絶たれたそうです。離れられないように赤い帯でお互いを結んで…あんなに幸せそうに笑っていらしたのに何があったんでしょうね…貴方もおふたりをご存知みたいでしたから…明日が葬儀らしいので行かれますか?」

藤世(ふじせ)は大きなお腹を擦りながら、宝賀に聞いた。
宝賀は目を伏せて、そして首を横に振った。

「俺にそんな資格はない…」

その寂し気な瞳を見て、藤世は何かを感じ取ったかのように宝賀を抱きしめて背中を擦る。
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