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遠い日の約束。
第22章 自責の念
―――――…
「蘭子ちゃん。母様はいるかな?」
縁側で小さな子供をあやしている蘭子に、宝賀は声をかけた。
「宝賀さん。母様は畑の方に行ってるんです。呼んできましょうか?」
「いや…牛の肉が手に入ったから持ってきただけだから…それより、見ないうちに大きくなったね。葉子…」
蘭子の腕の中で眠る小さな子・葉子はどことなく美弥に似ていると宝賀は思った。
麻耶の孫なのだから美弥に似ていてもおかしくはないが、麻耶より美弥に似ていると思ってしまう。
自分が傷つけてしまった女…
「葉子はどんどん美弥姉様に似てくるの…私の好きだった美弥姉様…」
瞬時に表情を曇らせる蘭子を直視できずに視線を外した。
その好きだった美弥の命を奪ったのは自分だと言えたらどんなに楽かと思わずにはいられない。
だけど、それを口にすれば蘭子も麻耶も傷つくだけだと分かっていた。
だから、宝賀は全てに口をつぐむ。
それが宝賀が出した答えだった。