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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
立花さんの事は好きだけど、それとこれとは話は別。
フルフルと頭を振って差し伸べられた手を取ることはできなかった。
動こうとしない私を諦めたのかテントの用意を始める姿を見て少し寂しくなる。
傍に行きたくて動こうとしても足は動かない…
立花さんは好きだと言うだけあって手際が良くあっというまに組み立て、今度は火を起こしはじめた。
まだ昼の2時なのにと思っているうちに、簡単に炭に火が移り赤々と燃え出す。
その前にローチェアーを2つ置き、私の元に戻ってくる。
手に持っていた厚手のストールで私を包み込む。

「手を首にまわして」

何をされるのか察した私は躊躇する。
車は最後の砦。
この中から出たらどうなるか自分でも分からなかった。

「いいから…言うとおりにして」

有無を言わさぬ瞳で見つめられ、渋々と首に腕を回した。
そして、思った通り軽々持ち上げられ、車の外に出た。
怖さから目を瞑り、必死にしがみつく。
そのまま抱きしめられたままローチェアーに座った。
立花さんは何も話さない。
だけど、ずっと私の背中を擦って恐怖心を取り除こうとしてくれていた。
不思議と時間が立つと、恐怖心も和らいでいく。
そこに彼の温もりがあるからかもしれない。
このまま何もせずに帰るのは嫌だと思い始める自分にも驚いた。
ゆっくりと顔を上げて、湖に視線を移す。
一瞬身体が震え、その瞬間強く抱きしめられた。

「大丈夫…私がいるから怖くない…」

何度も怖くないと言われれば不思議と怖さは薄らいでいく。
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