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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
運転している立花さんの横顔を見ていると、彼の手が私の手を取り手の甲にチュッとキスをし満足そうに微笑んだ。
それから1時間程車は高速道路を走り、一般道に降りた。
ナビを見ることなく車は目的地へと進む。
グルグルと山道を登っていき、漸く目的地に到着したのは家を出てから4時間も後だった。
目の前に広がるのは湖。
あまりに近すぎて私は車から降りられないでいる。
外に出て背伸びをして凝り固まった身体を解している立花さんは、車からでない私を不思議そうにみていた。
ゆっくりと助手席に廻りドアが開かれた。

「どうしたの?疲れた?」

心配そうな瞳が私を見つめる。

「華?」

どうしていいのか分からない私は目が泳いで焦点が合わなくなっていた。

「華?私を見て?」

私の目線と合わせるように腰を落とし、私の視線を一点に集中させる。

「どうしたの?言って?」

優しい瞳に、また涙が零れだす。
なぜ泣いているのか分からない。
怖くて泣くのは初めてだった。

「水が…怖いんです…得に海とか…湖とか…怖くて近づけない…」

驚いたのか目を見開き、そして目を細めて優しく微笑んだ。

「怖くない…私がいるから華は大丈夫…来てごらん」

手を差し伸べられても反応することなんてできない。
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