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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
穏やかに告げる俊樹さんの顔を見たいと思った。
どんな表情なのか気になって仕方がなかった。
私はゆっくりと振り返り俊樹さんの顔を見た。
月に照らされ、光る涙…
そっとその涙に触れた。
そして初めて私の方から唇を重ねる。
どうしてそうしたのかなんて分からない。
ただそうしたかっただけ。
唇を離すと、瞳と瞳がぶつかりどちらかともなく激しいキスに変わる。
星を見ることもなくキスに没頭していく。
クチュクチュという卑猥な音と吐息にも似た私の声が宙を舞い湖に吸い込まれていく。
もっと俊樹さんが欲しいと思った瞬間、一陣の風が吹き包まれたような感覚に襲われる。
それは決して怖いものではない。
どこかほっとする、暖かなものに感じられた。

「感じた?美弥と…葉月の想いを」

愛おしそうにその名前を口にする。

「美弥と…葉月…?」

「先ほど語ったふたりの名前…」

振り返り湖を見て私は目を閉じた。
感じるか感じないかを聞かれると何も感じない。
けれど、その伝説を聞きたいと強く思ってしまう。

「伝説…聞かせてもらってもいいですか?」

「少し長くなるけど…星を見ながら語ろうか…」

私の向きを変えさせて、先ほどまでの体制に戻って後ろから抱きしめられる。

「それは…悲しくも愛を貫いた人たちの物語」

そう言って、俊樹さんは語り始めた。
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