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第1章 目の前に立つのは…

中川悠哉はショートカットより少し長め、
ゆるいウェーブの茶髪。

公園で見た男性も茶髪、
ウェーブがかってはいるけどムースか何かでサイドを後ろになで付けていた。
歳は……２０代前半？
黒のスーツに革靴、
そしてグレーのシャツに青いネクタイ。
新入社員だと着なれないスーツにネクタイのビジネスマンスタイルは、
ぎこちなさがあるが先ほどの彼は着なれている・着こなしていると表していいくらいだ。
だから彼は入社して１〜２年くらいだろうか。

かっこいいとは思う……

だが綾香は男性へ絡む女性を見たくない理由と、
茶髪から中川悠哉を連想する為にお弁当を半分残しながら逃げたのだ。

『あの公園には行かなきゃいい！』
そんな予防策を口にして。
だがそんな綾香の後ろ姿を見ながら男性は小さく呟いた。
『……綾香？……』

まとわりつく女性は目に入らないかのように彼女の行く先を見つめて――

―
――
男性の残像から中川悠哉を思い出し仕事に集中出来ず怒られて。
『すみません…』

『リストラ対象にあがるのもわかる気がするわ』
『森部さんって居るか居ないかわかんない空気みたいね』
『人数分書類コピーしてきて』

吉川は先輩上司に習いデータ作成をしていたからこそ落ち込む綾香。

『先輩…会いたい…遠距離恋愛に我慢はしてるけど、こんな日には顔が見たい。会いたいメールくらいいいよね…』

【綾香です、
先輩寂しくて会いたい。
この間は逃げちゃったけど彼氏は先輩しかいないもの】
そんなメールに夕方着信が入っていた。

【またくだらない愚痴を言いたいのか？
仕方ないけど近くにいるからわがままは大目にみよう、駅前で待つ】