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《リベンジ★ラブ》
第1章 目の前に立つのは…
***
金曜日の終業に綾香は泊まり用のバッグを持ちロッカールームを後にした。
駐車場を通り過ぎようとしていたら吉川に呼び止められ綾香は彼を見る。
『何?吉川くん』
『大きなバッグなんか持ってるから何処かに行く予定?送って行こうか?』
『駅まですぐだから平気』『送って行くよ』
白い車の助手席ドアを開けて待つ吉川の為に綾香は従うしかなかった。
『泊まり?独り暮らし?』『はい…』
『両親の家に帰るわけ?それとも彼氏?』
『言わなくちゃダメですか?』
『………』
さらさらな髪を耳辺りでカットされたメガネ男性の吉川くんは、
すぐると読む秀の名前がピッタリなくらい仕事内容も覚える事に積極的だ。
だが唯の彼氏に似た外見でも吉川が少しインテリっぽいような。
あたしパソコンも人並み以下なのに何故見栄をはり、出来ますって面接で言っちゃたかな…
吉川くん1人でいいんじゃないかと…
『駅前に着いたけど?』
慌てて降りる綾香に吉川は苦笑する。
『仕事中に時々自信なさそうに今みたいに考えてるけど、リストラされても仕方ないんじゃないの?』
なっ!
綾香は悔しくて振り返りもせずに券売機へと走った。
駅から先輩が待つ場所へタクシーで向かい温かさを求め抱きつこうとしたが、
彼はそれに気づく事なく片手をあげただけ。
だから綾香も立ち止まり手を振った。
『先輩…』
挨拶をするかのように唇を合わせるキス、
挨拶をするかのようなただのキス。
『先輩あたし今落ち込んでいて挨拶みたいなキスよりも抱き…』
『何?またつまらない考え?くだらないよ、くだらないね』
先輩は理由すら聞かずに「くだらない」の一言で済ませてしまう。
それは失恋を引きずる18〜19歳の頃には頼もしく思えたけど、
今は少し違う気もする。
言葉よりも抱きしめてほしいの…
ホテルの一室で綾香は彼にベッドに押し倒され、
サークル時の穏やかさは消えて告白=自分のモノだといわんばかりに上着を左右に開かれて。
嫌っ!
こんなの嫌!
先輩優しいキスと温かい抱擁から始めてほしいの…
首筋を噛まれ軽く血が滲むと涙さえ出てきた。
『帰りたい!甘くないのは嫌!』
綾香は精一杯先輩を押しのけてラブホを後にした。
優しくして――