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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
月城の眼鏡がきらりと光る。
「…何…?」
勇気を振り絞り、月城の前に胸を張って仁王立ちする。
「…あ、暁様には二度と触れない。キスもしない。手も握らない」
「当たり前だ!」
月城の端正な眉が苛立ったように顰められる。
「でも!…暁様のことは好きでいる!」
「…何だと?」
じゃり…と月城の靴底が踏みしめる小石の音が響き、泉は背筋を震わせた。
薫が泉を鼓舞するかのように、可愛らしい両手を万歳させて、高い声を上げた。
薫のにこにこ笑顔に励まされるように、拳を握り締める。
「…す、好きでいるだけだ!…こ、心の中だけで思っている。兄貴にも暁様にも迷惑はかけない!…心は…自由だろ⁉︎」
月城は、じっと泉を睥睨するように眺め回すと、ふっと視線を途切れさせ、やや呆れたように言い捨てた。
「…勝手にしろ…」
…やがて泉から背を向け歩き始めたが、すぐに足を止め
「…タイが曲がっているぞ。…だらしがない」
と涼しい貌で告げた。
泉はブチ切れる。
「あんたのせいだろうが‼︎」
…月城は傍らの乳母車の薫に視線を落とすと、打って変わった優しい笑顔でそっとその柔らかな頬を撫でた。
「…ご機嫌よう、薫様…」
薫は鈴を転がすように笑った。
その様子に目を細め、月城はしなやかにその場を後にした。
兄の姿が視界から消えると泉は薫に駆け寄り、抱き上げる。
「…か、薫様〜ッ‼︎こ、怖かったよ〜ッ‼︎」
薫は小さな手で半べそを掻く泉の頬をペタペタと叩きながら、始終ご機嫌で笑い続けたのだった。
「…何…?」
勇気を振り絞り、月城の前に胸を張って仁王立ちする。
「…あ、暁様には二度と触れない。キスもしない。手も握らない」
「当たり前だ!」
月城の端正な眉が苛立ったように顰められる。
「でも!…暁様のことは好きでいる!」
「…何だと?」
じゃり…と月城の靴底が踏みしめる小石の音が響き、泉は背筋を震わせた。
薫が泉を鼓舞するかのように、可愛らしい両手を万歳させて、高い声を上げた。
薫のにこにこ笑顔に励まされるように、拳を握り締める。
「…す、好きでいるだけだ!…こ、心の中だけで思っている。兄貴にも暁様にも迷惑はかけない!…心は…自由だろ⁉︎」
月城は、じっと泉を睥睨するように眺め回すと、ふっと視線を途切れさせ、やや呆れたように言い捨てた。
「…勝手にしろ…」
…やがて泉から背を向け歩き始めたが、すぐに足を止め
「…タイが曲がっているぞ。…だらしがない」
と涼しい貌で告げた。
泉はブチ切れる。
「あんたのせいだろうが‼︎」
…月城は傍らの乳母車の薫に視線を落とすと、打って変わった優しい笑顔でそっとその柔らかな頬を撫でた。
「…ご機嫌よう、薫様…」
薫は鈴を転がすように笑った。
その様子に目を細め、月城はしなやかにその場を後にした。
兄の姿が視界から消えると泉は薫に駆け寄り、抱き上げる。
「…か、薫様〜ッ‼︎こ、怖かったよ〜ッ‼︎」
薫は小さな手で半べそを掻く泉の頬をペタペタと叩きながら、始終ご機嫌で笑い続けたのだった。