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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
…二人は暫く強く抱きあっていたが、ふと月城が腕を緩め、愛の眼差しを残したまま、スツールから立ち上がった。
蓄音機に近づくと、隣の戸棚から慣れた仕草で一枚のレコードを取り出すと、蓄音機にセットし針を落とす。

…蓄音機からは甘く気怠い湿度を含んだフランス語の愛の唄が流れる。
暁はそっと耳を傾けた。
三カ月滞在したパリの記憶が蘇る。
「…この唄、パリのカフェやバーで流れていた…」
「…la vie en rose…薔薇色の人生…ですね…最近、日本でも流行り始めているようですよ」
礼也と比べても遜色のない美しいフランス語が聞こえた。
「君はシャンソンも詳しいんだな…」
教養も深く、知識が豊富な男にうっとりする。

月城が暁に向かい手を差し伸べた。
「…踊っていただけますか?…ワルツでなくて申し訳ありませんが…」
「僕と?…ここで?」
暁は目を見張る。
「…貴方と人前でダンスを踊ることはまず不可能でしょう…」
…男同志で…しかも男爵家の息子が使用人と踊ることは、禁忌に近かった。
夜会でそんなことをしたら…たちまちスキャンダルになる。
…悲しいけれど、それが現実だ。
「…うん…」
…だから暁は月城とダンスを踊ったことは一度もない。
「でも私は…貴方とダンスが踊りたいのです」
暁の胸が乙女のように甘くときめく。
「よろこんで…」

腕が引き寄せられ、そのまま腰を抱かれる。
密着した胸から、お互いの鼓動が伝わる。
握りしめられた手から、月城の愛が伝わる。

…唄にあわせて、ゆっくりとステップを踏む。
月城の視線を感じ、そっと見上げる。
その瞳の中に、複雑な色が浮かんでいた。
「…パリでは夜会に?」
「数回ね…忍さんにエスコートしてもらったよ。彼はパリの社交界やコミュニティに詳しくて、頼もしかった…」
「…風間様…」
暁の手がきゅっと握りしめられる。
「…ホテル・カザマのご令息様ですね」
…暁の学院の先輩で、十数年前に亡くなった兄の妻と連れ子と共にパリに駆け落ちした男…。
その時の手引きは全て暁がやったのだ。

…そして束の間ではあったが、暁と身体の関係があった男…。
風間に会ったのは数回だけだが、クォーターだというその風貌は日本人離れしていて、華やかな目を惹く美男子だった。

心の奥底がちりちりと小さく焼け付く…。
…馬鹿な…今更嫉妬するなんて…。
月城は頭を振り払う。




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