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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
「…暁様、もしよろしければご一緒に旅行に行っていただけませんか?」
…そう月城に尋ねられたのは、BAR Casablancaからの帰り道、縣家の別荘まで送って貰った時のことだった。
「…え?…り、旅行…?」
月城が言っている意味が分からずに、きょとんとした貌をしている暁に、月城はやや恥らうような表情で続けた。
「…明後日、暁様が軽井沢からお帰りになる日を変更出来ませんか?私は遅い夏休みを頂いたので、その日を充てて暁様と旅行をしたいのです」
暁はその黒目勝ちの大きな瞳を見開いた。
…旅行…!月城と旅行…!
夢のような計画を月城から聞かされて、暁は舞い上がりそうになる。
「…旅行…行きたい…!月城と…行きたい…!」
譫言のような言葉しか出てこない暁を、愛しげに見つめる。
「…良かった…。では、縣様に今回の件をご了承いただいて下さい。軽井沢から旅行に行き、そのまま東京に帰京すると…」
第一関門は礼也だ。
未だに月城に暁を取られたと思い込んでいる礼也は、二人での旅行を快く思うはずがないからだ。
暁はうんうんと頷く。
「分かった。兄さんに必ず了解してもらう。…月城と…絶対旅行に行きたいから」
健気に答える暁を、月城は優しく抱きしめる。
「…ただの旅行ではございません。…暁様…、新婚旅行でございます…」
睫毛が重なりそうな距離で月城の美しい眼差しに見つめられ、心臓が音を立てて騒ぎ出す。
「…しん…こん…りょ…こう…」
暁の薄紅色の唇がたどたどしく震える。
その唇をすかさず奪いながら、氷の彫像のような美貌に色めいた微笑みを浮かべる。
「…はい。私達の新婚旅行です。…どうぞお楽しみにされて下さい…」
そう囁くと月城はしなやかに車に乗り込んだ。
鮮やかなハンドル捌きで走り去る車を見送りながら、暁は震える声で繰り返す。
「…新婚…旅行…月城と…新婚…っ…。…ど、どうしよう…どうしよう…」
狼狽える暁の背後から、カイザーの元気な鳴き声が聞こえる。
続いてぱたぱたと駆け寄る足音と共に薫が天真爛漫に飛びついてきた。
「暁叔父様!お帰りなさい!…あれ?叔父様、どうしたの?お貌が赤いよ?」
暁はしどろもどろになり、薫を益々不審がらせるのであった…。
…そう月城に尋ねられたのは、BAR Casablancaからの帰り道、縣家の別荘まで送って貰った時のことだった。
「…え?…り、旅行…?」
月城が言っている意味が分からずに、きょとんとした貌をしている暁に、月城はやや恥らうような表情で続けた。
「…明後日、暁様が軽井沢からお帰りになる日を変更出来ませんか?私は遅い夏休みを頂いたので、その日を充てて暁様と旅行をしたいのです」
暁はその黒目勝ちの大きな瞳を見開いた。
…旅行…!月城と旅行…!
夢のような計画を月城から聞かされて、暁は舞い上がりそうになる。
「…旅行…行きたい…!月城と…行きたい…!」
譫言のような言葉しか出てこない暁を、愛しげに見つめる。
「…良かった…。では、縣様に今回の件をご了承いただいて下さい。軽井沢から旅行に行き、そのまま東京に帰京すると…」
第一関門は礼也だ。
未だに月城に暁を取られたと思い込んでいる礼也は、二人での旅行を快く思うはずがないからだ。
暁はうんうんと頷く。
「分かった。兄さんに必ず了解してもらう。…月城と…絶対旅行に行きたいから」
健気に答える暁を、月城は優しく抱きしめる。
「…ただの旅行ではございません。…暁様…、新婚旅行でございます…」
睫毛が重なりそうな距離で月城の美しい眼差しに見つめられ、心臓が音を立てて騒ぎ出す。
「…しん…こん…りょ…こう…」
暁の薄紅色の唇がたどたどしく震える。
その唇をすかさず奪いながら、氷の彫像のような美貌に色めいた微笑みを浮かべる。
「…はい。私達の新婚旅行です。…どうぞお楽しみにされて下さい…」
そう囁くと月城はしなやかに車に乗り込んだ。
鮮やかなハンドル捌きで走り去る車を見送りながら、暁は震える声で繰り返す。
「…新婚…旅行…月城と…新婚…っ…。…ど、どうしよう…どうしよう…」
狼狽える暁の背後から、カイザーの元気な鳴き声が聞こえる。
続いてぱたぱたと駆け寄る足音と共に薫が天真爛漫に飛びついてきた。
「暁叔父様!お帰りなさい!…あれ?叔父様、どうしたの?お貌が赤いよ?」
暁はしどろもどろになり、薫を益々不審がらせるのであった…。