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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
…秋晴れの爽やかな一日だった。
軽井沢から汽車を乗り継ぎ、信州松本に着くと月城と暁は松本城を見学した。
東西問わず城好きだと言う北白川伯爵に同行し、かつてこの城にも訪れたことがあった月城は、物慣れた様子で暁に城の案内をしてくれた。
…他には類を見ない美しい五重の天守、壁面の上部を白漆喰、下部を黒漆塗りの下見板で覆われた松本城は別名鴉城と呼ばれているほど威風堂々とした美しくも誇り高い姿を現していて、初めて見る暁はその壮大さに目を見張った。
午後は山辺の葡萄畑を歩き、ワイナリーのワインを試飲したのち、レストランでランチを摂った。
そば粉のクレープ、アスパラガスと水牛のチーズのピッツア、虹鱒のバターソテー、信州牛のたたき…そして珍しいバルベーラというイタリア産の白ワインに野趣溢れた山葡萄の赤ワイン…など月城が決めてくれたメニューはどれも美味しかった。
ワイナリー見学はビストロの全国展開を手掛ける暁の事業のヒントになれば…と配慮してくれているさり気ない優しさを感じ、暁は心が温かくなった。
小高い丘に設えられたレストランのテラス席から眺める葡萄畑は、まるでフランスのブルゴーニュ地方のそれのようで、暁はうっとりと美しい景色に見惚れる。
松本平から吹く風は心地よく、ワインの酔いをさり気なく覚ましてくれた。
「…連れてきてくれて、ありがとう」
暁は潤んだ瞳で月城を見つめた。
白く透き通るような肌は薔薇色に染まり、初秋の透明な光の中で輝いて見える。
「お礼を申し上げるのは私の方です。…本当はもっと早くにお連れしたかった。…貴方と旅行をすることすら、何年もかかってしまった私をお許しください」
苦しげに詫びる月城に暁は首を振る。
「君は悪くない。…僕の立場を考えて、目立たぬように行動してくれたのだろう?…君の方こそ、僕より厳しい立場なのに…」
テーブルに置かれた暁の白い手を月城は柔らかく握りしめる。
「…貴方との関係を守りたいが為に、私は臆病になっていました。…けれど私と貴方は人生の伴侶となったのです。…私はもう誰にも遠慮しません。そう決めたのです」
暁の美しい瞳が涙で煌めく。
「…月城…」
月城は端正だが艶めかしい瞳で笑い、握りしめた薬指の指輪をそっと撫で上げる。
「…だから遠慮せずに申し上げます。…早く貴方と二人きりになりたい…」
暁の頬が、再び朱に染まる。
「…ばか…」
軽井沢から汽車を乗り継ぎ、信州松本に着くと月城と暁は松本城を見学した。
東西問わず城好きだと言う北白川伯爵に同行し、かつてこの城にも訪れたことがあった月城は、物慣れた様子で暁に城の案内をしてくれた。
…他には類を見ない美しい五重の天守、壁面の上部を白漆喰、下部を黒漆塗りの下見板で覆われた松本城は別名鴉城と呼ばれているほど威風堂々とした美しくも誇り高い姿を現していて、初めて見る暁はその壮大さに目を見張った。
午後は山辺の葡萄畑を歩き、ワイナリーのワインを試飲したのち、レストランでランチを摂った。
そば粉のクレープ、アスパラガスと水牛のチーズのピッツア、虹鱒のバターソテー、信州牛のたたき…そして珍しいバルベーラというイタリア産の白ワインに野趣溢れた山葡萄の赤ワイン…など月城が決めてくれたメニューはどれも美味しかった。
ワイナリー見学はビストロの全国展開を手掛ける暁の事業のヒントになれば…と配慮してくれているさり気ない優しさを感じ、暁は心が温かくなった。
小高い丘に設えられたレストランのテラス席から眺める葡萄畑は、まるでフランスのブルゴーニュ地方のそれのようで、暁はうっとりと美しい景色に見惚れる。
松本平から吹く風は心地よく、ワインの酔いをさり気なく覚ましてくれた。
「…連れてきてくれて、ありがとう」
暁は潤んだ瞳で月城を見つめた。
白く透き通るような肌は薔薇色に染まり、初秋の透明な光の中で輝いて見える。
「お礼を申し上げるのは私の方です。…本当はもっと早くにお連れしたかった。…貴方と旅行をすることすら、何年もかかってしまった私をお許しください」
苦しげに詫びる月城に暁は首を振る。
「君は悪くない。…僕の立場を考えて、目立たぬように行動してくれたのだろう?…君の方こそ、僕より厳しい立場なのに…」
テーブルに置かれた暁の白い手を月城は柔らかく握りしめる。
「…貴方との関係を守りたいが為に、私は臆病になっていました。…けれど私と貴方は人生の伴侶となったのです。…私はもう誰にも遠慮しません。そう決めたのです」
暁の美しい瞳が涙で煌めく。
「…月城…」
月城は端正だが艶めかしい瞳で笑い、握りしめた薬指の指輪をそっと撫で上げる。
「…だから遠慮せずに申し上げます。…早く貴方と二人きりになりたい…」
暁の頬が、再び朱に染まる。
「…ばか…」