この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
…静かな夜だった。
他の離れの宿にも宿泊客はいるはずなのだが、かなり離れて建っているからか、人の声や気配も皆無だ。
…この風雅で鄙びた隠れ家のような宿に暁と月城…二人きりのような気さえしてくる。
暗い闇の中、行燈に照らされた湯の表面が湖のように波紋を作っていた。
大理石の露天風呂に、暁は少し遅れて入った。
床に脚が触れた時、月城が腕を伸ばし引き寄せる。
「あっ…!」
バランスを崩す前に長く逞しい腕に抱き込まれ、膝の上に幼児のように乗せられた。
「…や…だ…っ…はずかし…」
月城は薄く笑い、暁の髪を掻き上げる。
「…せっかくご一緒に入浴しているのです。私に貴方の美しい身体をよく見せてください」
「な、何を言っているんだ」
月城は長く美しい指でそっと暁の首筋から肩のラインをなぞる。
そして、暁の形の良い顎を掴むと貌を近づけた。
「…綺麗だ…。相変わらず…いや、貴方は年を追うごとに美しくなる」
暁は薄紅色に染まった頬を背けるように横を向く。
「…そんなこと…。僕はもう36だ。…若い頃とは違う…」
「いいえ。…貴方は年を重ねられても驚くほどにお変わりにならない。…むしろ、しっとりと美しく艶を増されてゆく…このお貌も…この身体も…」
月城の指がしなやかに貌を這い回り、あっと言う間もなく唇が奪われる。
「…んんっ…は…あ…っ…」
月城の熱い滑らかな舌に思う様口内を弄られ、吸い尽くされる。
息が止まりそうな濃厚なくちづけに暁は甘く掠れた声を上げる。
「…暁様…」
更に淫らなくちづけや悪戯を仕掛けようとする月城を必死で止める。
「…ね、ねえ…月城…聞きたいことがあるんだ」
月城は暁の柔らかな花の蕾のような唇を弄るのをやめない。
「何でしょうか?」
「…昔、葵さんに告白された時…なぜ断ったの?」
月城は端正な眉を上げる。
「彼女に聞いたのですか?」
暁は俯きながら小さな声で呟く。
「…うん…」
月城は穏やかに口を開く。
「私は、親友の恋人とお付き合いすることはできません。…例え親友が亡くなったとしても…。それに私は当時、旦那様に忠誠をお誓いしていましたから、恋人を持つことなど、考えてもおりませんでした」
暁がぽつりと呟いた。
「…梨央さんがいたから…だろう?…君は当時、梨央さんに恋をしていた。…だから断ったのだろう?」
…こんなことを聞いてもしかたないのに、つい聞いてしまう。
他の離れの宿にも宿泊客はいるはずなのだが、かなり離れて建っているからか、人の声や気配も皆無だ。
…この風雅で鄙びた隠れ家のような宿に暁と月城…二人きりのような気さえしてくる。
暗い闇の中、行燈に照らされた湯の表面が湖のように波紋を作っていた。
大理石の露天風呂に、暁は少し遅れて入った。
床に脚が触れた時、月城が腕を伸ばし引き寄せる。
「あっ…!」
バランスを崩す前に長く逞しい腕に抱き込まれ、膝の上に幼児のように乗せられた。
「…や…だ…っ…はずかし…」
月城は薄く笑い、暁の髪を掻き上げる。
「…せっかくご一緒に入浴しているのです。私に貴方の美しい身体をよく見せてください」
「な、何を言っているんだ」
月城は長く美しい指でそっと暁の首筋から肩のラインをなぞる。
そして、暁の形の良い顎を掴むと貌を近づけた。
「…綺麗だ…。相変わらず…いや、貴方は年を追うごとに美しくなる」
暁は薄紅色に染まった頬を背けるように横を向く。
「…そんなこと…。僕はもう36だ。…若い頃とは違う…」
「いいえ。…貴方は年を重ねられても驚くほどにお変わりにならない。…むしろ、しっとりと美しく艶を増されてゆく…このお貌も…この身体も…」
月城の指がしなやかに貌を這い回り、あっと言う間もなく唇が奪われる。
「…んんっ…は…あ…っ…」
月城の熱い滑らかな舌に思う様口内を弄られ、吸い尽くされる。
息が止まりそうな濃厚なくちづけに暁は甘く掠れた声を上げる。
「…暁様…」
更に淫らなくちづけや悪戯を仕掛けようとする月城を必死で止める。
「…ね、ねえ…月城…聞きたいことがあるんだ」
月城は暁の柔らかな花の蕾のような唇を弄るのをやめない。
「何でしょうか?」
「…昔、葵さんに告白された時…なぜ断ったの?」
月城は端正な眉を上げる。
「彼女に聞いたのですか?」
暁は俯きながら小さな声で呟く。
「…うん…」
月城は穏やかに口を開く。
「私は、親友の恋人とお付き合いすることはできません。…例え親友が亡くなったとしても…。それに私は当時、旦那様に忠誠をお誓いしていましたから、恋人を持つことなど、考えてもおりませんでした」
暁がぽつりと呟いた。
「…梨央さんがいたから…だろう?…君は当時、梨央さんに恋をしていた。…だから断ったのだろう?」
…こんなことを聞いてもしかたないのに、つい聞いてしまう。