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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
木立の脇にあった素朴な木の腰掛けに座ると月城に脚を出すように促された。
月城は神社の境内の手水で湿らせた手拭いで暁の下肢を丁寧に拭き清める。
「…お冷たいでしょうが、少し我慢されてください…」
「…うん…大丈夫…」
照れ臭くてまだ貌は見られない。

暁の前に跪いた月城は優しく下駄を脱がせる。
雪洞の灯りに、暁の真珠色の美しい脚が照り輝く。
余りの美しさに月城は息を飲む。
華奢な指先に揃う爪はまるで可憐な桜貝を埋め込まれているようだ。
下駄の鼻緒が当たる辺りに小さな擦り傷を見つける。

…自分が無理やり背中から犯した時に出来た傷かも知れない…。
申し訳ない思いと共に、甘く湿った加虐的な悦びが湧き上がる。
…暁の身体に傷を付ける権利は、自分だけが所有しているという屈折した愉悦感だ。

そんな気持ちを詫びるように、月城は暁の脚を恭しく掲げると、そっと傷口にくちづけ、舌を伸ばした。
「…あっ…!…だめ…っ…きたない…から…」
喘ぐように脚を引っ込めようとする暁の動きを止める。
「貴方はどこもかしこも綺麗だ。…全部…食べてしまいたいほどに…」

熱い吐息と共に熱い舌先が脚の甲を蠢く。
「…んっ…!…つき…しろ…」
甘い痺れのような快感が脚先から這い上がる。
「…も…やめ…て…」
泣き出しそうな暁に憐憫の情が湧き、月城は静かに微笑むと丁寧に下駄を履かせた。
「…申し訳ありません。…今夜は私は暁様を困らせてばかりですね…」
しみじみと詫びる月城の手を慌てて握り締める。
「そんなことない!…僕は…月城がしてくれることは何でも嬉しいんだ。触られることも…すごく嬉しい…。…ただ、我慢できなくなるから…困るだけ…」
恥じらうように呟く暁が余りに愛しくて、すかさず唇を奪う。
睫毛の触れ合う距離で微笑み合う。
「…では、気を取り直して参拝に行きますか…?」
暁が赤くなりながらもじもじする。
「…でも…あんなことをした僕たちが参拝して…ばちが当たらないかな?」
月城は優しく暁の頬を撫でる。
「深志神社は夫婦円満にご利益のある神社だそうですよ。…神様はきっと私たちが仲睦まじい様子をご覧になって、喜ばれるはずです」
澄ました貌で言ってのけた月城を見上げ、暁は吹き出した。
「…君は案外図太いんだな」
「お褒めにあずかり、光栄でございます」
二人は貌を見合わせると、弾けるように笑った。






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