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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
「…暁様…。申し訳ありません。…私は貴方にそれほどまでに寂しい思いをさせているとは思いが至りませんでした」
強く抱きしめられている暁の耳元に、月城の苦しげな声が届く。
暁は慌てて首を振る。
「違うんだ。君が悪い訳じゃない。君の仕事は立派だし、僕は心から応援している。僕も今の仕事や生活に誇りを持っている。不満がある訳じゃない。…そうじゃないけれど…」
もどかしそうに訴える暁の眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「…僕は君が大好きで…君を愛しすぎているから…君のそばでずっと暮らしたいと思ってしまっただけなんだ…」
「…暁様…」
暁が遠くを見るような切ないような眼差しをする。
「…ただの僕の夢だ…。…君とずっと一緒に離れないでいること…。
…でも、もう言わないから…今夜だけだから…」
…暁には分かっていた。
月城は自分を貧しい漁村から執事見習いとして見出してくれ、大学まで卒業させてくれた北白川伯爵に大変な恩義を感じている。
女所帯の北白川伯爵家を離れる訳にはいかないということを。
人一倍責任感が強い月城が、自分の個人的な事情のみで職を辞するはずがないということを。
月城は暫く黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「…私は伯爵に見出していただきました。…貧しく学もなかった私が、今こうして暁様といられるのも全ては伯爵のお陰です。…私は伯爵の期待を裏切る訳にはいきません。梨央様も綾香様も大切にお守りする責務があります」
暁は優しい笑みを浮かべると月城を見上げた。
「分かっている。…そんな月城が僕は大好きだ」
…そんな月城だから、好きになったのだ。
「…けれど…」
眼鏡の奥の怜悧な瞳がひたりと暁を見つめる。
「…貴方を幸せにしなければ、私の人生は意味を成しません」
「…月城…」
「もう少し、お待ちいただけますか?…私は必ず、貴方の望みを叶えられるよう、全力を尽くします」
…だから、これからも私と共に生きていただけますか?
と懇願するように尋ねられ、暁は月城の首筋に抱きつく。
「…もちろんだ。…君が嫌だと言っても離れない」
二人は小さく微笑み合う。
微笑み合いながら、どちらからともなく優しいくちづけをする。
…夜天に浮かぶ蜂蜜色の月は、まるで紙で出来たかのように薄く儚い…。
けれど愛し合う二人が見上げれば、それは永遠に輝く黄金の月となるのだ。
強く抱きしめられている暁の耳元に、月城の苦しげな声が届く。
暁は慌てて首を振る。
「違うんだ。君が悪い訳じゃない。君の仕事は立派だし、僕は心から応援している。僕も今の仕事や生活に誇りを持っている。不満がある訳じゃない。…そうじゃないけれど…」
もどかしそうに訴える暁の眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「…僕は君が大好きで…君を愛しすぎているから…君のそばでずっと暮らしたいと思ってしまっただけなんだ…」
「…暁様…」
暁が遠くを見るような切ないような眼差しをする。
「…ただの僕の夢だ…。…君とずっと一緒に離れないでいること…。
…でも、もう言わないから…今夜だけだから…」
…暁には分かっていた。
月城は自分を貧しい漁村から執事見習いとして見出してくれ、大学まで卒業させてくれた北白川伯爵に大変な恩義を感じている。
女所帯の北白川伯爵家を離れる訳にはいかないということを。
人一倍責任感が強い月城が、自分の個人的な事情のみで職を辞するはずがないということを。
月城は暫く黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「…私は伯爵に見出していただきました。…貧しく学もなかった私が、今こうして暁様といられるのも全ては伯爵のお陰です。…私は伯爵の期待を裏切る訳にはいきません。梨央様も綾香様も大切にお守りする責務があります」
暁は優しい笑みを浮かべると月城を見上げた。
「分かっている。…そんな月城が僕は大好きだ」
…そんな月城だから、好きになったのだ。
「…けれど…」
眼鏡の奥の怜悧な瞳がひたりと暁を見つめる。
「…貴方を幸せにしなければ、私の人生は意味を成しません」
「…月城…」
「もう少し、お待ちいただけますか?…私は必ず、貴方の望みを叶えられるよう、全力を尽くします」
…だから、これからも私と共に生きていただけますか?
と懇願するように尋ねられ、暁は月城の首筋に抱きつく。
「…もちろんだ。…君が嫌だと言っても離れない」
二人は小さく微笑み合う。
微笑み合いながら、どちらからともなく優しいくちづけをする。
…夜天に浮かぶ蜂蜜色の月は、まるで紙で出来たかのように薄く儚い…。
けれど愛し合う二人が見上げれば、それは永遠に輝く黄金の月となるのだ。