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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
十市の大きな手が紳一郎の貌を包み込み、唇を重ねる。
「…坊ちゃん…」
「…紳一郎て、呼んで…」
「…紳一郎…」
「…十市…」
名前を呼び合うだけで、満たされる幸福感に酔う。
ただお互いの存在を愛おしく想うだけのくちづけが交わされる。
…階下の店から軽やかなピアノの音が聞こえ、それに聞き覚えのある透明感のある美しい歌声が加わる。
「…綾香さんだ!」
紳一郎は屋根裏部屋の木の格子の隙間から下を覗き見る。
明るい照明に照らされ、真紅のチャイナドレスを着た目が醒めるように美しい歌姫がしっとりとした声で歌い出す。
賑やかな拍手と歓声が飛ぶ。
「…まるでノートルダムの鐘のような部屋だな…」
あちらからはこちらが見えないのに、こちらからはまるでシネマか何かのように生き生きとした人々の様子が見える。
紳一郎の素肌にシャツを羽織らせる十市を見上げる。
「…でもお前は醜いカジモドじゃない。…美しい僕の恋人だ…」
「…坊ちゃん…」
「紳一郎だ。十市…」
「…紳一郎…」
十市の熱い唇が重ねられ、吐息ごと奪われる。
…綾香の美しい唄声が、静かに響き渡る。
暖炉の火が消えても、寒くはないわ…。
貴方がいるから…。
気の早いクリスマスの唄だ。
…今年のクリスマスは…
十市がいる…。
泣きたくなるような幸せに、紳一郎は男の首筋にしがみつく。
「…ありがとう、十市…」
小さく呟く紳一郎を、十市は黙って強く抱きしめた。
「…坊ちゃん…」
「…紳一郎て、呼んで…」
「…紳一郎…」
「…十市…」
名前を呼び合うだけで、満たされる幸福感に酔う。
ただお互いの存在を愛おしく想うだけのくちづけが交わされる。
…階下の店から軽やかなピアノの音が聞こえ、それに聞き覚えのある透明感のある美しい歌声が加わる。
「…綾香さんだ!」
紳一郎は屋根裏部屋の木の格子の隙間から下を覗き見る。
明るい照明に照らされ、真紅のチャイナドレスを着た目が醒めるように美しい歌姫がしっとりとした声で歌い出す。
賑やかな拍手と歓声が飛ぶ。
「…まるでノートルダムの鐘のような部屋だな…」
あちらからはこちらが見えないのに、こちらからはまるでシネマか何かのように生き生きとした人々の様子が見える。
紳一郎の素肌にシャツを羽織らせる十市を見上げる。
「…でもお前は醜いカジモドじゃない。…美しい僕の恋人だ…」
「…坊ちゃん…」
「紳一郎だ。十市…」
「…紳一郎…」
十市の熱い唇が重ねられ、吐息ごと奪われる。
…綾香の美しい唄声が、静かに響き渡る。
暖炉の火が消えても、寒くはないわ…。
貴方がいるから…。
気の早いクリスマスの唄だ。
…今年のクリスマスは…
十市がいる…。
泣きたくなるような幸せに、紳一郎は男の首筋にしがみつく。
「…ありがとう、十市…」
小さく呟く紳一郎を、十市は黙って強く抱きしめた。