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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
和室の座敷で、月城は暁に白い麻の浴衣を着付けてやる。
月城は北白川伯爵の着物の着付けをすることもあるので、その手際は鮮やかだ。
白い浴衣姿の暁は仄の明るい夏の宵闇の中、ぞっとするほど美しく…そして妖しかった。
だが、自分の美しさに全く気づいている様子もなく、ひたすら嬉しそうに月城を見つめている。
「…この浴衣、どうしたの?」
月城は暁の後ろから暁を抱きしめるように、帯を締めてやる。
「屋敷の料理長の春さんが洋裁も和裁も得意で、無理を言って、仕立てて貰いました」
…月城は麻の反物を抱えて、春の仕事部屋をノックした。
「春さん!一生のお願いです。浴衣を二着、日曜日の夕方までに縫っていただけないでしょうか⁈」
月城の常ならぬ迫力に、春は一瞬たじろいだ。
「ど、どうしたんだい?急に…」
「どうしても、日曜日に浴衣を着て外出したいのです」
「…へ⁈…二着…てことは…」
「はい!」
春は何かを察したように、にこにこと満面の笑みになる。
そして豊かな胸をどんと打ちながら請け負った。
「…そうかい、そうかい…分かったよ、春さんに任しておきな!夜なべしてでもちゃあんと仕上げてやるからね!」
月城は、春をぎゅうっと抱きしめる。
「ありがとうございます!春さん、感謝します!」
感謝の意を精一杯表すと、月城は春の仕事部屋を颯爽と後にした。
キッチンメイドが羨ましそうに春を見る。
「いいなあ、春さん…月城さんに抱きしめられるなんて…」
春は乙女のように頬を染め、鼻唄を唄いながら、反物を広げる。
「まあまあ!麻の葉の綺麗な模様だこと!…あれ?…でも…これ、男物…二着…?」
…狐につままれたような顔を春がしたことは、月城は知らない…。
月城は北白川伯爵の着物の着付けをすることもあるので、その手際は鮮やかだ。
白い浴衣姿の暁は仄の明るい夏の宵闇の中、ぞっとするほど美しく…そして妖しかった。
だが、自分の美しさに全く気づいている様子もなく、ひたすら嬉しそうに月城を見つめている。
「…この浴衣、どうしたの?」
月城は暁の後ろから暁を抱きしめるように、帯を締めてやる。
「屋敷の料理長の春さんが洋裁も和裁も得意で、無理を言って、仕立てて貰いました」
…月城は麻の反物を抱えて、春の仕事部屋をノックした。
「春さん!一生のお願いです。浴衣を二着、日曜日の夕方までに縫っていただけないでしょうか⁈」
月城の常ならぬ迫力に、春は一瞬たじろいだ。
「ど、どうしたんだい?急に…」
「どうしても、日曜日に浴衣を着て外出したいのです」
「…へ⁈…二着…てことは…」
「はい!」
春は何かを察したように、にこにこと満面の笑みになる。
そして豊かな胸をどんと打ちながら請け負った。
「…そうかい、そうかい…分かったよ、春さんに任しておきな!夜なべしてでもちゃあんと仕上げてやるからね!」
月城は、春をぎゅうっと抱きしめる。
「ありがとうございます!春さん、感謝します!」
感謝の意を精一杯表すと、月城は春の仕事部屋を颯爽と後にした。
キッチンメイドが羨ましそうに春を見る。
「いいなあ、春さん…月城さんに抱きしめられるなんて…」
春は乙女のように頬を染め、鼻唄を唄いながら、反物を広げる。
「まあまあ!麻の葉の綺麗な模様だこと!…あれ?…でも…これ、男物…二着…?」
…狐につままれたような顔を春がしたことは、月城は知らない…。