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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
今日は階上の対応で忙しく階下のキッチンには誰もいなかった。
泉は手早くチャイを作り、温室に急いだ。

…司は先ほどと同じ場所のソファに座り、温室の窓硝子越しに屋敷の舞踏室をぼんやり眺めていた。
雪が降りしきる中、舞踏室の中で踊る華やかな人々がまるで幻燈のように映っているのだ。
それを眺める司の横顔は酷く傷ついた子どものように頼りなげであった。
泉の胸は掴まれたように痛んだ。

「お待たせいたしました、司様」
泉はわざと明るい声で近づいた。
司は素直にカップを受け取り、チャイを口に運んだ。
「…美味しい…」
しみじみとした声がいじらしい。
「それは良かったです」
「君が作るチャイはいつも美味しいな…」
「…司様さえよろしければ、いつでもお作りしますよ」
「…こんな珍しいもの、よく作れるな。ここにきて初めて飲んだよ」
あっという間に空になったカップにお代わりのチャイを注いでやりながら答える。
「法科専門学校に行っていた時に留学生のインド人に教わりました。だから本格的なのです」
司は泉を見上げる。
「君は確か弁護士の資格も持っているんだよな…」
「ええ」
「どうして弁護士にならなかったの?」
「…当時まだ幼かった薫様が私が辞めるのを嫌がられて…。三日三晩泣かれて高熱を出されてしまいましたので、弁護士になるのはやめました」
あっさりと笑う泉に司は信じられない貌をする。
「…もったいないな」
「…でも、私はこちらの方々が大好きですから…。執事の仕事にも誇りを持っております。薫様の成長を拝見できましたし…後悔はしておりません」
爽やかに…しかしきっぱりと言い切る泉の凛々しい横顔に思わず見惚れる。
「…薫くんは幸せだな…。こんなに愛情深い執事が側にいて…」
笑いかけ、ふっと寂しげに俯いた。
「…真紀は…僕とのことをきっと後悔しているんだ。…実家が傾いて…自分が家を立て直さなくてはならなくなったから…僕が邪魔になったんだ…。
…確かに、僕と付き合っていても良いことは何もないものな…。男同志だし、結婚も出来ないし子どもも作れない。…真紀の為なら援助してあげたいけれど、多分そんなことは真紀のプライドが許さない。
…だから…本当は日本に帰国した時に僕とのことは終わらせたつもりだったんだ。
…だけど僕が追いかけて日本に来たから…。
…真紀は困ったんだろうな…」
哀しげな声が途絶える。
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