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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第7章 聖夜
二人が麻布十番の暁の家に帰宅した頃には、深夜の12時を過ぎていた。
月城は暁の外套を優しく脱がすと、暖炉に新しい薪を火にくべた。
種火だった火が次第に赤々と燃え上がる。
「寒くありませんか?」
微笑みながら振り返る月城に、暁が抱きつく。
「…遠慮しないで縣の家に泊まったら良かったのに…。
兄さんも是非に…て言ってくれたのに…」
優しく抱き返しながら、暁の艶やかな髪を撫でる。
「…晩餐会にご招待頂けただけで充分です。
それに…」
眼鏡越しの美しい瞳が色めいて笑う。
「…今夜は貴方とどうしても愛し合いたかった。…縣様のお屋敷では、そうはいきませんので…」
暁の白い頬が朱を刷いたように赤らんだ。
「…そんな…こと…。あの家でも…構わないのに…」
月城の美しい指が暁の形の良い顎を捉える。
「…本当に?…貴方のあの可愛らしくも淫らな声を、お兄様にきかせても良いのですか?」
暁はふっとその事を脳裏に思い浮かべ、慌てて月城にしがみつく。
「…それは…嫌だ…。兄さんに聞かれるのは嫌…」
暁の初々しい反応に礼也への嫉妬めいた感情が僅かばかり生まれる。
「貴方は相変わらず縣様がお好きなのですね…」
「…怒った?」
顔色を伺う暁に月城は薄く笑い首を振る。
「いいえ。縣様は貴方の大切なお兄様だ。
…けれど…」
暖炉の前の毛足の長い敷物の上に押し倒される。
「…あっ…」
暁の黒いネクタイを手品のように一瞬で解いてしまう。
「…貴方にこんなことを出来るのは私だけだ…」
黒いテイルコートが脱がされ、ベストの釦が外される。
「…ここで…するの…?」
誰もいないとはいえ居間で愛し合うとは思っていなかったのだ。
月城は片手で眼鏡を外した。
「…他のお部屋はまだ寒いですよ。ここなら貴方を冷えさせることはない…」
「…月城…」
暁は横たわったまま月城の首筋に手を回す。
「…いいよ。…君の好きにして…君に愛してもらえるなら…僕はどこでもいい…」
いじらしい言葉に月城は思わず暁を掻き抱き、その柔らかく可憐な薄紅色の唇を貪る。
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