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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
司の部屋の窓からは、縣一家が賑やかに車に乗り込む風景が見えた。
黒いメルセデスが冬の清潔な光に照らされ、きらきら光る。
菫はカイザーと跳ねるように、車内に収まった。
窓辺でそれを見下ろし、司は思わず微笑む。
…菫ちゃんを見ると、瑠璃子に逢いたくなるな…。

玄関の車寄せの脇に植わっている木立の陰に、泉が薫と向かい合っているのが見えた。
司は窓に貌を寄せる。
…薫は何かを泉に訴えているようだった。
泉はそれを宥めるように薫の肩に手を置き、車の方に誘おうとする。
…と、怒ったような表情をした薫が泉の腕を掴み、背伸びをして唇にキスをした。
司は思わず眼を見張った。

泉は動じた様子もなく優しく薫を抱き締めると、そのまま車に乗り込ませた。

車は薫を載せると滑らかに走り出し、やがて門扉の外へと消えていった。

司はレースのカーテンを閉め、肩を竦めた。
「…人たらしめ…」
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