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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
縣家が用意してくれた司の部屋には広々としたバスルームが付いていた。
南仏風の漆喰の壁に床はモザイクタイル、ゆったりとした白いバスタブには菫の薫りのバスオイルが入れられていて、温かな湯と共に全身の細胞が潤びてゆくのを感じる。
熱もすっかり引き、気分も爽快だ。
一枚硝子から差し込む冬の透明な光の中、司はゆっくりと手足を伸ばし、湯に浸かる。
…考えるのは、泉のことだ。

…新しい恋…か…。
それは、泉と…ということなのだろうか…。
きっとそうなのかもしれないが、いまひとつ司には確信が持てなかった。

確かに好きだと告白はされたが、本当に彼は本気なのだろうか。
失恋した自分を慰めようと、リップサービスで言ったのではないだろうか。

司はバスタブの中で膝を抱え、ため息を吐く。

…真紀に振られて、すっかり自信を失くしてしまったみたいだ。

また、恋をして、裏切られるのが怖いのかも知れないな…。

柔らかな菫色の湯の水面に、不安気な司の貌がゆらりと揺らめいて見えた。



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