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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
風呂から上がり、ドレッシングルームで髪を乾かしていると、ノックの音が聞こえた。
「失礼いたします」

振り返ると、執事の制服姿の泉が入って来るところだった。
思わず、バスローブの胸元を掻き合わせる。
「お髪をお拭きします」
司は慌てる。
「い、いいよ。一人でできる…」
「お風邪が治られたばかりですから、生乾きですとまたお熱が上がりますよ。…さあ、お座りください」
渋々、スツールに腰掛ける。

泉が優しく丁寧にタオルで髪を拭いてくれるのを、鏡越しに見ながら、ぽつりと呟く。
「…僕が風邪を引いちゃったせいで、泉はお正月休みがなくなっちゃったんだね…」

…そうだ。
本当だったら箱根で慰安を兼ねた旅行に行けたのだ。
泉は古参だし縣夫妻の信頼も厚い執事だから、あちらでさぞ慰労されたことだろう。
それなのに、自分の看病の為に屋敷に一人残り、世話をしなくてはならなくなったのだ…。
司は改めて申し訳なく思った。

「ああ、そんなこと…」
ふっと悪戯めいた…それでいてどこか艶めいた泉の眼差しと鏡越しに眼が合う。
「…却ってラッキーでした。…司様と二人きりになれましたからね…」
「へ⁈」
司は思わず素っ頓狂な声を上げる。
髪を拭いていたタオルを司の肩に置き、その長い指で髪を撫でる。
「…綺麗な髪ですね。…陽に透けると、亜麻色に見えました…」
「…泉…」
温かな吐息が当たるほど近い距離で覗き込まれる。
「…貴方を想う男と広いお屋敷に二人きりですよ。
…怖くないですか…?」
泉の端正な貌が真近に迫り、胸の鼓動がどきどきと早鐘のように打つ。
「…せ、泉…」
身を縮こませる司に、泉は打って変わった陽気な笑い声を立てる。
「…嘘ですよ。貴方が余りに緊張されているから可笑しくて…。
ご心配なく。私は嫌がる相手に手を出したことは、一度もないんですから」
「泉!もうっ!」
揶揄われたのだと判り、司はむっと唇を尖らせる。

笑い収めた泉は、温かな微笑のまま尋ねた。
「怖がらせて申し訳ありません。
…お詫びに良いところにお連れしましょう。…もう平熱におなりですし、昼間なら少しお散歩くらいは、大丈夫でしょう。
…司様、お着替えを…。お手伝いいたします」
意外な申し出に司は眼を丸くする。
「どこに行くの?」

泉は悪戯っぽく笑い、ウィンクをしてみせた。
「…着いてからのお楽しみです」
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