この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
「…薫くんが、謝ってくれたよ。嘘を吐いてごめんなさい…て。…それから…」
司は優しく泉を見上げる。
「泉を大切にしてあげて…て。…幸せにしてあげて…て」
泉の澄んだ男らしい瞳が驚いたように瞬かれ、その唇が一瞬、切なげに歪んだ。
…彼もまた、薫をとても愛していたのだ。
恋ではなくとも…。
いや、もしかしたら恋よりも深い愛情で、薫を愛していたのかもしれない。

その想像は司の胸の中に春の薔薇の柔らかな棘が刺さったかのような小さな痛みを齎した。
司は何も言わずに泉に抱きついた。
「…泉…。愛しているよ。…薫くんを泣かせても…僕は君を愛している。…君を誰にも渡さない…」
泉は静かに…しかししっかりと司を抱きしめた。
「…司様…。私もです。貴方を愛しています。…誰よりも…貴方だけを…」
熱い言葉が耳元に囁かれる。
それだけで、小さく刺さった棘が溶けて流れだすように感じる。
ゆっくりと腕を解かれながら、司は泉に貌を寄せる。
「…キスして…泉…」
睫毛が触れ合いそうな距離で泉の凛々しい眼差しに見つめられる。
「…司…」
大きなしなやかな両手が司の貌を包み込む。

しっとりと、押し包むような…愛情と優しさを込めたくちづけが惜しみなく司に与えられる。
「…泉…」
温かな吐息を分かち合うような慈しみ深いくちづけを幾度か交わす。

「…司様…」
「…うん…?」
「私は貴方を愛しています」
幸せに頬を薔薇色に染めながら頷く。
「…ありがとう…」
泉が愛おしげに司の亜麻色の艶やかな髪を掻き上げる。
「…貴方をこれからも全てにおいて全力でお護りいたします」
「…うん…ありがとう…」
泉が目を細めて司の額にくちづける。
「…ですから、私が執事の制服を着ている間は貴方に決して触れません」
「…うん…」
…と言いかけて…
「…へ⁈い、今なんて⁈」
泉が端正な引き締まった美貌に完璧な笑みを浮かべながら答える。
「…私は貴方に相応しい紳士にならなくてはなりません。誰よりも立派な執事になるべく、決意いたしました。…どうぞご理解下さい」
…では…と優雅なお辞儀をするとしなやかにその場を後にした。

「ちょっ!ちょっと〜‼︎…制服着てる間って…ずっとじゃないか!いつセックスするんだよ‼︎
泉!泉ってば!」
慌てて追いかける司が去った後には、眩い陽射しに照らされた冬の白い薔薇が微かに揺れているだけであった。
/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ