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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
…東向きの温室は主に英国から苗を取り寄せ、植えつけた薔薇が咲き乱れる…さながら薔薇の楽園であった。
むせ返るような薔薇の香気に包まれ、二人は暫し立ち止まる。

「…綺麗だな…」
感に耐えたような大紋の呟きに、暁は振り返って笑う。
「ええ。ここの庭師の腕は一流です。本国でも難しいデリケートな新種の薔薇を、見事に根付かせました」
大紋は静かに微笑み、暁を見つめる。
「君のことだよ。暁…」
少し近すぎる距離まで近づく。
「…君は相変わらず、思わず心が奪われるほどに美しい…」
はっと見上げる瞳に、大紋の昔と変わらぬ熱を帯びた眼差しが刺さる。
「…春馬さん…」
ぎこちなく眼を伏せる暁に、大紋は陽気に笑って戯けてみせた。
「大丈夫。もう君を困らせるようなことはしないよ。
…僕は君への愛は聖なるものに昇華させた…つもりだからね。けれど僕は面食いだから、美しいものには弱いんだ。
…うん。これはもう宿命だな」
「…揶揄ってばかり…。相変わらずですね」
軽く睨んで膨れて見せる。

まだ朝露を含んだままの白い薔薇の群生に歩み寄る暁の背中に、穏やかに声をかける。
「…何があったの?暁…」
「…え…?」
驚いて振り返る暁を包み込むように…しかし真摯な眼差しが捉える。
「君がこの家に一人で泊まっているなんて、よほどのことだ。
…そして、君の貌を見ただけで分かったよ。とても哀しい貌をしているね。
…月城と何があった?」
大紋の視線を避けるように貌を背ける。
「…何も…何もありません。…月城が最近忙しいからここに泊まりに来ただけです。僕達はとても上手くいっています。ご心配なく。
…さあ、もう戻りましょう。…メイドにお茶を用意…」
行きかける暁のか細い腕を、大紋の逞しい手が捉えた。
「嘘だね、暁…」
掴まれた手が熱く、暁の身体が一瞬震える。
「離して…下さい…」
捉える手の力は増すばかりだ。
「…僕には本当のことを言ってくれないか。暁…。
かつて僕は君の嘘を見抜けずに、君を永遠に喪った…。
もうそんなことはしたくないんだ。
傷ついている君を見過ごしてはおけない」
「傷ついてなんか…!」
振り返ると息を呑むほど近い距離に大紋がいた。
…まるでくちづけするかのような近さで、男が見つめる。
愛を告白するかのように、男が囁く。
「…君は僕にもう嘘を吐いてはいけないんだ…。何があったの…?暁…」




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