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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
今度は月城が息を飲む番だった。
「暁様、あれは発作を起こされた梨央様の呼吸を確保する為の医療行為です」
「…そうかもしれない。…けれど、僕には恋人同士のくちづけに見えたよ」
嫌味ではなく物哀しそうに呟く暁の腕を捉える。
「何を馬鹿なことを仰っしゃるのですか…私と梨央様は…」
「馬鹿…?」
暁はその手を邪険に振り払う。
「君と梨央さんが抱き合っているのを見たという人がいるんだ。それも医療行為というのか?」
自分でも止めようのない黒くどろどろとした醜い妬みの塊を月城にぶつけてしまう。
眼鏡の奥の怜悧な瞳が厳しく眇められる。
「誰がそのようなことを申したのですか?」
「誰でもいいだろう。抱き合っていたというのは本当なのか?」
詰め寄る暁に月城は硬い表情のまま、静かに答えた。
「そのようなことはあり得ません。
…それよりも…」
月城の端麗な貌に失望の色が浮かぶのを暁は認めた。
「…そのようなことを暁様が信じてしまわれることの方が私には衝撃です」
月城の突き放すような冷たい言葉に、暁は愕然とする。
「…そんな…」
「誰の戯言か分かりませんが、貴方は私よりその者の言葉を信じたのですね…」
月城の言葉は暁の胸に鋭く突き刺さる。
…そうかも知れない…
けれど…そうさせたのは誰なんだ…!
「…だって…仕方ないだろう?
君を信じたくても、君とゆっくり話す時間もない。会うことも出来ないのに、一体どうやって誤解を解けというんだ⁈」
「暁様…」
「僕は君をずっと待っていた。
けれど君は連絡すらくれなかった。
君は僕より梨央さんの方が大事なんだろう?
だから僕を一人にしても平気なんだろう?」
月城への耐えきれない愛も欲望も焦燥も猜疑心も全てが暁の胸の内から溢れ出す。
しかしそれは全て負の言葉となり、月城に石飛礫のようにぶつかっていった。
月城の顔色が変わる。
「暁様…!」
…こんなこと、言うつもりじゃないのに…!
「今の僕は君のことを信じられない。
…春馬さんを昔みたいに好きなわけじゃない。…けれど、春馬さんは僕をとても理解してくれている。
だから話していると安心する。
…君は…春馬さんと同じくらいに僕を理解してくれているのか…?」
…決して口にしてはならぬ言葉が暁の唇から溢れ落ちた。
月城の彫像のように美しい貌が見たことがないほど苦しげに歪んだ。
「暁様、あれは発作を起こされた梨央様の呼吸を確保する為の医療行為です」
「…そうかもしれない。…けれど、僕には恋人同士のくちづけに見えたよ」
嫌味ではなく物哀しそうに呟く暁の腕を捉える。
「何を馬鹿なことを仰っしゃるのですか…私と梨央様は…」
「馬鹿…?」
暁はその手を邪険に振り払う。
「君と梨央さんが抱き合っているのを見たという人がいるんだ。それも医療行為というのか?」
自分でも止めようのない黒くどろどろとした醜い妬みの塊を月城にぶつけてしまう。
眼鏡の奥の怜悧な瞳が厳しく眇められる。
「誰がそのようなことを申したのですか?」
「誰でもいいだろう。抱き合っていたというのは本当なのか?」
詰め寄る暁に月城は硬い表情のまま、静かに答えた。
「そのようなことはあり得ません。
…それよりも…」
月城の端麗な貌に失望の色が浮かぶのを暁は認めた。
「…そのようなことを暁様が信じてしまわれることの方が私には衝撃です」
月城の突き放すような冷たい言葉に、暁は愕然とする。
「…そんな…」
「誰の戯言か分かりませんが、貴方は私よりその者の言葉を信じたのですね…」
月城の言葉は暁の胸に鋭く突き刺さる。
…そうかも知れない…
けれど…そうさせたのは誰なんだ…!
「…だって…仕方ないだろう?
君を信じたくても、君とゆっくり話す時間もない。会うことも出来ないのに、一体どうやって誤解を解けというんだ⁈」
「暁様…」
「僕は君をずっと待っていた。
けれど君は連絡すらくれなかった。
君は僕より梨央さんの方が大事なんだろう?
だから僕を一人にしても平気なんだろう?」
月城への耐えきれない愛も欲望も焦燥も猜疑心も全てが暁の胸の内から溢れ出す。
しかしそれは全て負の言葉となり、月城に石飛礫のようにぶつかっていった。
月城の顔色が変わる。
「暁様…!」
…こんなこと、言うつもりじゃないのに…!
「今の僕は君のことを信じられない。
…春馬さんを昔みたいに好きなわけじゃない。…けれど、春馬さんは僕をとても理解してくれている。
だから話していると安心する。
…君は…春馬さんと同じくらいに僕を理解してくれているのか…?」
…決して口にしてはならぬ言葉が暁の唇から溢れ落ちた。
月城の彫像のように美しい貌が見たことがないほど苦しげに歪んだ。