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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
月城と大紋を比べるような言葉は、決して口にはしてはならなかったのだ。
そんなことはわかっていた。
第一、月城と大紋を比べたことなど今まで一度もなかったのだ。
月城と大紋は違う。
性格も、暁への態度や言葉掛けも…そして愛した方も…。
月城に大紋のようになって欲しいと思ったこともない。
月城の存在そのものを愛しているからだ。

…けれど、止まらなかった。
月城の不在による寂しさと、心細さと、月城と梨央との親密さへの嫉妬心、醜い猜疑心が超えてはならない線を超えてしまったのだ。
八つ当たりに近い暴言だ。
…きっと月城は暁を失望と軽蔑の眼差しで見ていることだろう…。
暁は最早月城の表情を見る勇気もなく、貌を背けると彼の前から足早に立ち去った。

「暁様!」
背中に掛かる声に振り向きもせずに、暁は逃げるように温室を後にした。

屋敷へと続く回廊で立ち止まり、振り返る。
…月城は、追いかけては来なかった…。


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